研究課題
STAT3は非刺激の状態で細胞質と核間をシャトルしているが、IL-6などで活性化されたJakキナーゼにより、Y705にリン酸化を受けるとpY705-SH2間の結合により安定化した平行型の2量体となり、核内貯留がもたらされ標的遺伝子群の発現を招く。刺激60分後から始まる非活性化過程は、リン酸化Ser727とL78を含むインターフェースでのN末ドメイン(NTD)間の相互作用が起点となり開始されることを示し、この機序として、pS727依存的にY705以降P715までの領域CTTに何らかの修飾が起こることで、CTTの関与するpY705-SH2結合が弱まりpY705-SH2間結合が解離することを示した。pY705-SH2結合の解離後、TC45による核内での脱リン酸化やCRM1依存性またはCRM1非依存性の核外輸送系の選択には、多段階のコンフォメーション変化が重要な役割を持つことを示唆した。STAT3の活性化―非活性化のサイクルを正しく回すことは、STAT3活性化シグナルの強さや持続を正しく受け取るために重要であることを示した。2019年度には、非刺激時や非活性化過程でのSTAT3のコンフォメーションの性状や変化について研究を進めた。種々のSTAT3変異体とDSSクロスリンカーを用いた解析から、非刺激時や非活性化過程でSTAT3は主に350kDaのクロスリンクされうる複合体を形成していること、活性型STAT3ダイマーはクロスリンクされない85kDaモノマーとして検出されること、350kDa複合体(4量体)の形成には、STAT3コア間の結合に加え、STAT3 CTR688-700領域が関わることを示した。非活性化過程で4量体形成しない変異体ではチロシン脱リン酸化も核外輸送も起こりにくいことから、STAT3は4量体をベースにした活性化―非活性化サイクルを取っていると考えられた。
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International Immunology
巻: 32 ページ: 73-88
10.1093/intimm/dxz061