研究課題/領域番号 |
17K08640
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
古山 和道 岩手医科大学, 医学部, 教授 (80280874)
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研究分担者 |
久保田 美子 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (30260102)
金子 桐子 岩手医科大学, 医学部, 講師 (10545784)
野村 和美 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50733581) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ATP依存性タンパク質分解酵素 / CLPXP / LONP1 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的の一つは、ATP依存性ミトコンドリアタンパク質分解酵素であるCLPXPとLONP1の役割分担を明らかにすることである。このため、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムを用いて、それぞれの遺伝子を欠失する培養細胞を樹立することを主な目的として研究を実施した。CLPXPについてはCLPXとCLPPの遺伝子の異なるタンパク質の複合体であるため、それぞれの遺伝子を欠失する細胞の樹立を試みた。対象とする細胞としては様々な外来性遺伝子cDNAの発現誘導が可能なFlp-In T-Rex293細胞(以下FT293細胞)を用いた。 その結果、CLPXタンパク質あるいはCLPPタンパク質の発現を欠失するFT293細胞は比較的容易に樹立することができたが、LONP1を欠失したFT293細胞の樹立は困難であった。LONP1の欠失が致死的な表現系を呈すると予想されたため、まず、今回我々がtargetとしたLONP1遺伝子配列部分にSilent変異を導入した外来性のLONP1cDNA を作成し、そのcDNA由来のLONP1タンパク質をドキシサイクリン(Dox)誘導性に発現する培養細胞株を樹立した。その後、当該LONP1 cDNAを発現させながら内在性のLONP1遺伝子の発現を欠失させる方法を用いた。その結果、LONP1の発現を欠失するFT293細胞を樹立することができたが、その細胞の発育は、野生型細胞に比べてかなり遅いことが明らかになった。 これらの細胞の表現型の比較は研究期間の最終年度のである平成31年度に実施する予定であるが、これまでの研究からはCLPXPは細胞の生存には必須ではない一方で、LONP1の欠失が致死の表現型を呈する可能性が高いことから、これらのタンパク質分解酵素の細胞内での役割には大きな違いがある可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集技術を用いて、ミトコンドリアのマトリクスに局在するATP依存性タンパク質分解酵素遺伝子を欠失した細胞を樹立する研究については、当初予想した範囲内の困難に直面したが、期待した方法により解決が可能であった。これらの細胞を用いて、平成31年度の研究を予定通り進めることが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに樹立したCLPX, CLPP, LONP1の欠失細胞について、ミトコンドリアの形態や機能の変化をミトコンドリアに集積する蛍光プローブなどを利用して明らかにしていく予定である。 また、内因性のCLPX, CLPP遺伝子を欠失した細胞で、FLAG-tagとの融合タンパク質としてCLPXあるいはCLPPタンパク質を発現させ、抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行なった後、それぞれのタンパク質が複合体を形成するタンパク質を質量分析装置を用いて同定する。LONP1についても同様の検討を行い、これらの結果を総合して、CLPXPとLONP1の役割の違いなどを明らかにすることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想以上に消耗品の節約が進んだことと、平成30年度の途中での退職により分担研究者が1名減ったことにより、主として消耗品費が減少したことが、次年度使用額が生じた理由であると考えている。翌年度には新たに研究分担者を加える予定であり、翌年度分として請求した助成金も合わせて主に消耗品費として使用する計画である。
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