申請者らは、以前GATA2はCebpaの転写を抑制することでマスト細胞の分化形質を維持していることを明らかにした。本研究課題では、この知見を発展させマスト細胞におけるGATA2によるCebpa転写抑制メカニズムの解明に着手した。 最終年度は、GATA2欠失時にPU.1がCebpa遺伝子座のアセチル化を誘導することがCebpa転写開始のトリガーとなっている可能性について解析を進めた。まずPU.1と結合し、アセチル化活性を有するP300の阻害剤(A-485)をGATA2の欠失と同時に添加してCebpaの発現を調べた。その結果、Cebpaの発現上昇はA-485添加によって完全に消失した。このことからCebpaの発現上昇にはP300を介したCebpa遺伝子座のアセチル化が必要であると考えられた。次に、PU.1がP300をリクルートすることでCebpa遺伝子座のアセチル化を促進させている可能性について明らかにするため以下の2つの解析を実施した。まずPU.1欠失後のCebpa遺伝子座のアセチル化修飾を調べた。その結果、定常状態でのCebpa遺伝子座の弱いアセチル化がPU.1の欠失によって消失した。次にPU.1がP300のリクルートを介してアセチル化を誘導しているのか否かA-485用いてChIP解析を行った。その結果、GATA2の欠失と同時にA-485を添加するとPU.1の結合増加は起こらなかった。この結果からアセチル化が誘導された後にPU.1が結合していると考えられた。昨年度の解析でGATA2とPU.1を同時に欠失させたBMMCsはCebpaの発現上昇の減弱が認められたものの消失には至らなかった。以上よりマスト細胞で認められたGATA2欠失によるCebpaの発現上昇において、PU.1は発現開始のトリガーではなく、その後の急激な発現上昇に関与している可能性が示唆された。
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