研究課題
細胞の核膜にある核膜孔は核膜孔複合体(Nuclear Pore Complex: NPC)から成り立っており、その複合体は約30 種類のNPC因子(ヌクレオポリン)から構成されている。本研究課題では核膜孔タンパク質とクロマチン相互作用による大腸がんの病態解明に関する探索を行った。実施期間中、大腸がん細胞における核膜孔についてナノスケールの構造およびダイナミクスの可視化に世界で初めて成功した。このヒト細胞由来の核膜孔を観察する技術については、特許出願を行っている(特願2017-223106号)。この技術により、核膜孔ゲートの変形と喪失ががん細胞の死に至るコードの一つであることを解明した(ACS Nano 2017 IF13.9)さらに、ヌクレオポリンの一つTPRによる大腸がん細胞のクロマチン構造変化・染色体安定化機構を明らかにした(Oncotarget, 2018 IF 5)。一方、幹細胞の性質を維持するために、NPCが秩序ある分子輸送場を構築する分子メカニズムを解き明かした(EMBO Reports, 2018 IF8.5)。本研究により、NPCの動態は細胞の状態に応じてダイナミックに変化し、細胞の運命を方向づける分子ナノゲートとして機能することが明らかとなった。この細胞運命決定に関わるヌクレオポリンの新機能は世界的にも注目され始めた研究領域であり、本研究成果はEMBO Reports誌のNews & Viewで取り上げられた。
1: 当初の計画以上に進展している
高いインパクトファクターの雑誌に原著論文を3報発表したため。
今後は核膜孔タンパク質(NPC)とクロマチン相互作用による大腸がんの病態測定方法を確立し、大腸がん早期発見のための診断ツールの開発を進める。
当初予定していた予算に、幸運なことに財団から研究助成金をいただくことができたため次年度使用額が生じた。今年度も計画的に使用し実験を進める。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 6件、 招待講演 7件) 図書 (1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
Oncotarget
巻: 9(17) ページ: 13337-13352
0.18632/oncotarget.24344.
EMBO Rep.
巻: 19 ページ: 73-88
10.15252/embr.201744523
ACS Nano.
巻: 11(6) ページ: 5567-5578
10.1021/acsnano.7b00906.
Oncogene
巻: 36(16) ページ: 2243-2254
10.1038/onc.2016.377
https://nanolsi.kanazawa-u.ac.jp/achievements/achievements-955/
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/47455