研究実績の概要 |
研究代表者らが報告したα-アレスチンタンパク質thioredoxin interacting protein (Txnip)は、糖尿病の病態・病因に重要な役割を果たし(Nature Commun., 2010)、同時に膀胱癌で変異が7%見られる実際の癌抑制遺伝子である。申請者は、Du145前立腺細胞株においてTxnipがglucose依存的に1000から1300kDaの核内高分子複合体を構成し、その複合体がRNAを含むことを明らかにした。Txnipの分子機構を調べるためにTxnipと相互作用するタンパク質を解析し、タンデムアフィニティー精製とプロテミクス分析によって複数の候補タンパク質HSP90, HSP70, Prp31を同定した。また、RNase 処理によりこの高分子複合体は減少し、Txnipが高次リボタンパク質複合体を形成することを明らかにしている。これらの結果により、Txnipが多くの結合パートナーと相互作用し、一過性の高次リボ蛋白質複合体を形成することによってその機能を発揮し、シグナル伝達調節因子の分解を調節するモデルを提示することができた(Archives of Biochemistry and Biophysics, 2019)。また、この複合体形成は、グルコースの投与やプロテアソーム阻害剤によって変化し、代謝制御、蛋白質分解調節を受けていることを示した(Bulletin of Tenri Health Care University, 2020)。さらにこれらのRNAをnon coding RNAを含めてRNAseqにより網羅的に解析した。Txnip過剰発現細胞はcontrol細胞と比較して、mRNAやlong non coding RNAがdifferentialに発現しており、Gene ontology解析やKEGG pathway解析により、TxnipによるRNA発現制御による代謝制御、癌抑制機構の可能性が示された(Data in Brief, 2019)。
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