研究課題/領域番号 |
17K08660
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
眞田 文博 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (30722227)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 選択的スプライシングバリアント / ペリオスチン / 慢性心不全 / 抗癌剤治療抵抗性乳癌 |
研究実績の概要 |
慢性炎症性疾患の病態形成に関与する細胞外マトリックス蛋白であるペリオスチンはそのC末端に4つの選択的スプライシングバリアントを有し、各々のバリアントは異なる機能を持つ。これまでに私たちは、乳癌、悪性黒色腫の転移実験で特定のスプライシングバリアント制御が転移および原発巣の増殖を抑制できること、心不全時において心肥大から心拡大に特定のペリオスチンスプライシングバリアントが関与することを報告してきた。そこで、本年度はペリオスチンスプライシングバリアントの発生メカニズム、特定バリアント発現細胞の性質を明らかにするため、以下の研究を行った。さらに心不全においてペリオスチンに続く治療ターゲットを見出すため、網羅的な解析を予定している。 1)ペリオスチンバリアントを可視化するベクターを構築し、ペリオスチン低発現および高発現乳癌細胞株において安定発現株を樹立。内因性のペリオスチン発現とベクターからの発色について検討を行った。2)上記乳癌細胞株における原発巣、転移モデルの検討。乳癌細胞株はペリオスチン低・高発現の4つの株を準備しており、それぞれの細胞株で原発層の増大スピード、遠隔転移までの期間、ターゲット臓器について検討を行っている。現在も進行中。3)MCF10DCIS乳癌細胞株(上皮間葉転換しやすい株)における、抗癌剤治療抵抗性形成期におけるペリオスチンスプライシングバリアントの変化と、特定のバリアントの抑制による抗癌剤治療抵抗性の改善効果の検討を行っている。 また、心不全代償期から非代償期にかけて変化するスプラシングバリアントの網羅的な解析を行うため、食塩感受性ダールラットおよび大動脈縮窄モデルにおいて心不全代償期から非代償期にかけてサンプルを回収、RNA-シークエンスを行う準備を現在行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定していた、乳癌(トリプルネガティブ乳癌)の抗癌剤治療抵抗性とペリオスチン選択的バリアントの関わりについての検討、および選択的スプライシングバリアント可視化のためのベクター作成を行った。さらに心不全病態形成期における選択的スプライシングの網羅的検討の準備が行え、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、樹立した乳癌細胞株(可視化ベクターを挿入した株)を用いて、抗癌剤治療抵抗性モデルの作成と治療抵抗性を起こした細胞のメカニズム解析。心不全に関しては病期おけるスプライシングバリアントの変化と治療抵抗性のメカニズム、特になぜ心拡大が生じるのかについて検討を予定している。
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