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2017 年度 実施状況報告書

環状ジヌクレオチドによる関節リウマチ誘発機序の解明と新たな治療戦略の創出

研究課題

研究課題/領域番号 17K08661
研究機関徳島大学

研究代表者

茂谷 康  徳島大学, 先端酵素学研究所(オープンイノベ), 助教 (70609049)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードSTING / ADAM17 / SEMA4D
研究実績の概要

細胞質に蓄積したDNAは、炎症を惹起し、関節リウマチ (RA) の原因となる。本研究では、DNAの蓄積によって活性化するSTINGタンパク質に着目し、その下流で誘導される炎症シグナルの分子機構を解明することを目的としている。これまでにSTINGは活性化すると、核近傍の特定のオルガネラに運ばれ、その輸送先でTBK1キナーゼを活性化して転写因子IRF3をリン酸化する機構が唯一知られていた。しかしながら、私は今回、その輸送先でTBK1非依存的に別の炎症シグナルが引き起こされる、という新しい現象を発見した。STINGの輸送に伴って細胞外に放出される炎症性因子を網羅的に探索した結果、IRF3依存的に転写誘導される既知のサイトカインに加え、免疫セマフォリンファミリータンパク質SEMA4Dを同定した。既知のサイトカインと異なり、SEMA4Dは遺伝子発現レベルでの変化は無く、IRF3非依存的に細胞外へ放出されることが明らかとなった。さらに、特異的阻害剤およびCRISPR/Cas9による遺伝子破壊法を用いた実験により、シェディング酵素ADAM17が細胞膜上のSEMA4Dタンパク質を切断・放出する責任因子であることを突き止めた。また、関節炎を伴う自己炎症性疾患の患者においてSTING遺伝子の恒常活性化型変異が報告されており、このマウスモデルではIRF3非依存的に炎症が惹起されることが示されている。そこで、このSTINGの病態関連変異体を細胞に発現させたところ、同様にADAM17を介したSEMA4Dのシェディングが誘導されることを見出した。以上の結果より、cGAMP-STING-ADAM17-SEMA4Dという新規の炎症シグナル伝達機構が明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では、STINGのオルガネラ間輸送に着目した下流シグナル伝達機構の解析を計画・実施し、STINGの輸送先においてTBK1キナーゼを活性化して転写因子IRF3をリン酸化する古典的経路に加え、ADAM17の活性化を介してSEMA4Dがシェディングされる新規経路が存在することを示した。この成果についてはすでに論文発表を行なっており、予想を上回る成果を上げることができたと考える。

今後の研究の推進方策

STINGの下流で起こる2つの炎症シグナルは、いずれもSTINGの輸送によって制御される。これまでにCBLL1やAP3B1がSTINGの輸送を制御する可能性を見出しているが、それらの分子がSTINGに直接作用する結果は得られていない。そこで対処法として、STINGに直接相互作用する因子を生化学的に同定するアプローチを試みる。具体的には、BioID法やクロスリンク免疫沈降法などを行なう。これらの因子を同定できれば、それらのノックアウト細胞を作製し、STINGの輸送や炎症誘導能に異常が生じるか否かを免疫染色法やウエスタンブロットで確認する。また、様々なアミノ酸置換体を作製し、互いの結合部位を決定する。また、SEMA4DやADAM17が関節炎の発症に関わっているのかを、RA疾患モデルマウスを用いて解析する。ゲノム編集技術を利用し、そのモデルマウスにおいて、SEMA4DやADAM17に変異を入れる。そして、炎症性サイトカインの産生や関節炎の発症が抑えられるか否かを確認する。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、STINGの輸送先で起こる炎症誘導機構について重点的に研究を進めたため、当初計画していたSTINGの輸送機構を本年度中に解析し終えることができず、その解析費用を次年度に持ち越すこととなった。次年度においてSTINGと直接相互作用する因子を生化学的に同定する解析を追加するため、その実験に必要な消耗品費として使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Activation of stimulator of interferon genes (STING) induces ADAM17-mediated shedding of the immune semaphorin SEMA4D.2018

    • 著者名/発表者名
      Motani, K.*, and Kosako, H.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1074/jbc.RA118.002175.

    • 査読あり
  • [備考] 細胞情報学分野::藤井節郎記念医科学センター

    • URL

      http://www.fujii.tokushima-u.ac.jp/cellsignaling/

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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