研究課題
本研究は、癌細胞における慢性炎症因子と癌代謝変容機構の関連解析を行い、癌細胞の代謝変容を標的とした新規癌浸潤・転移抑制法開発の基盤研究を行うことを目的としている。本研究では下記に示す2つの研究テーマについて解析を行った。(1) ANGPTL2を発現する癌細胞におけるmiRNAの発現解析。TFE3遺伝子の転座がみられる腎癌ではANGPTL2が強く誘導されていることが知られている。そのためTFE3転座を有する腎癌モデルマウス(TFE3トランスジェニックマウス)を作成し、TFE3転座とmiRNA発現の相関について検討した。miRNAのqPCRアレイ解析を行い、抽出された739種類のmiRNAの中から有意に上昇しているmiRNA15種類を同定した。次に、これら15種類のmiRNAに着目し、TFE3転座による腎癌患者の尿中のmiRNAを測定したところ、miR-204-5pが有意に上昇していることを見出した。これらの結果より、尿中miR-204-5p測定はTFE3転座による腎癌患者のバイオマーカーとして有用であることを明らかにした。(2) ANGPTL2高発現癌細胞における解糖系亢進メカニズム解析。ANGPTL2発現肺癌細胞ではGLUT3の発現が亢進しているが、そのメカニズムとしてZEB1が重要な働きを担っていることを見出した。肺癌細胞により分泌されたANGPTL2はインテグリンα5β1を介してERKを活性化し、ZEB1の誘導を介してGLUT3の発現を亢進させていることを明らかにした。また、肺癌患者の組織サンプルを解析した結果、肺癌組織におけるANGPTL2の発現とGLUT3、ZEB1の発現が相関することを見出した。以上の結果より、肺癌細胞におけるANGPTL2の発現は、ZEB1、GLUT3の発現を亢進させ、癌細胞の代謝変容を誘導することが明らかとなった。
すべて 2020 2019
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Cancer Sci
巻: - ページ: -
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