研究課題/領域番号 |
17K08665
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
苅谷 慶喜 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00458217)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 薬剤耐性 / 癌 / β4インテグリン |
研究実績の概要 |
平成29年度に実施した研究の主な成果としては、下記の二つが挙げられる。 1) β4インテグリンの発現が薬剤耐性におよぼす影響 β4インテグリンを発現していないメラノーマ細胞株MDA-MB435Sにβ4インテグリン遺伝子を導入し、α6β4インテグリン発現細胞を樹立した。その細胞に対するTRAILおよびドキソルビシンに対する薬剤抵抗性を調べたところ、β4インテグリン発現により薬剤抵抗性が有意に上昇した。効果の一般性をみるために、膵癌細胞株MIAPaca2でも同様にα6β4インテグリン発現細胞樹立を試みた。しかしながら、MIAPaca2では発現細胞株が得られなかった。これはMIAPaca2においてα6インテグリンの発現が非常に少ないため、α6β4インテグリンとして発現できなかったためと考えられた。一方、β4インテグリンを内在的に発現しているヒト皮膚癌細胞株A431に対して、異なる2種類のshRNAによるβ4ノックダウン細胞を樹立した。それら細胞に対して、TRAILおよびドキソルビシンに対する抵抗性を調べたが、β4のノックダウンによる効果が低かった。これはA431細胞における内在性β4インテグリンの存在とEGFRの過剰な活性化が原因と考えられた。 2) 薬剤耐性に関与するβ4インテグリン相互作用分子の同定 β4インテグリンはラミニン332やEGFRと相互作用する。それら分子との相互作用部位を欠損/変異させた変異型β4インテグリン発現MDA-MB435S細胞を樹立した。樹立した細胞の薬剤耐性を1)と同様に調べたところ、野生型β4インテグリン発現細胞に比べ、変異型β4発現細胞では有意に薬剤耐性能が低下していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、樹立したβ4インテグリン発現細胞を用いて、β4インテグリン発現が薬剤耐性に関与することを明らかにできた。これは、β4インテグリン発現が薬剤耐性に関与するか否か、という本研究の命題に対する答えであり、大きな成果と考えられる。 さらに変異型β4インテグリン発現MDA-MB435S細胞の解析から、β4インテグリンとラミニン332やEGFRとの相互作用はβ4インテグリンによる薬剤耐性獲得に関与することが新たに示唆された。 これらは申請書の研究計画どおりの進展である。したがって、現段階において研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
MIAPaca2で樹立できなかったα6β4インテグリン発現細胞は、別の膵癌細胞株Panc-1でもおこなってみる。それが難しい場合は、Rasでtransformしたβ4インテグリン欠損ケラチノサイトを用いて同様の薬剤耐性試験をおこなう。A431β4ノックダウン細胞での解析は難しいようなので、乳癌細胞株MDA-MB231に対してβ4をノックダウンさせた細胞での解析を試みる。また、パクリタキセルやドセタキセルなどの他の抗がん剤についても検討をおこなう予定である。 miRNAやエクソソームは薬剤耐性に関与することが示唆されている。そこでβ4インテグリンの発現により変化するmiRNAやエクソソーム構成成分の量や修飾をリアルタイムPCRやウェスタンブロットなどを用いて解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
抗体や培養関係のチューブを再利用することで経費を抑えることができたため。次年度使用額については必要な抗体を買うために使用する予定でいる。
|