研究課題
結節性硬化症(TSC)のモデルラットより樹立したTsc2 ホモ変異体ES細胞における、グローバルなヒストンH3のK4(H3K4)トリメチル化(H3K4me3)低下の原因を追及する目的で、H3K4のメチル化に関与するメチル化酵素、脱メチル化酵素群の遺伝子発現を分析した。その結果、予期せぬことに、H3K4me3の脱メチル化酵素をコードするJARID1ファミリー、とりわけJARID1aとJARID1cの遺伝子発現が低下する傾向が認められた。H3K4me3の低下はラパマイシンによって回復することから、mTORC1依存的な分子機構によるH3K4me3の低下、それに伴うJARID1ファミリー遺伝子群の発現へのフィードバック機構(調整)が想定される。また、ホモ変異体においては、野生型細胞などへの影響がより小さい、低濃度のメチル化阻害薬処理により、H3K4me3量の回復を達成できる可能性がある。一方、これまでmTORC1依存性に分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素Bcat1の発現が促進されている現象が見出されていたことから、Bcat1の阻害薬であるガバペンチンの腫瘍増殖抑制効果を分析した。マウスTsc1、Tsc2欠損腎腫瘍細胞に対するガバペンチン単独処理(20 mM)では、Tsc2欠損細胞において有意な増殖抑制効果が認められたものの、Tsc1欠損細胞株では抑制効果は認められなかった。しかしながら、ラパマイシン(5 nM)との併用においては、双方の細胞において、ラパマイシンによる増殖抑制効果が増強されることが確認された。両薬剤の併用がTSCの治療に有効な方法となる可能性が示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Cancer Science
巻: 111 ページ: 840-848
doi: 10.1111/cas.14307.