研究課題/領域番号 |
17K08675
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
八木下 尚子 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 講師 (40367389)
|
研究分担者 |
中島 利博 東京医科大学, 医学部, 教授 (90260752)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / シノビオリン / 小胞体関連分解 / E3ユビキチン化酵素 / がん細胞 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(RA)滑膜細胞に過剰発現するシノビオリンは、小胞体関連タンパク質分解で機能するユビキチン化酵素である。我々はこれまでに、シノビオリンが小胞体ストレス誘導性アポトーシスを抑制することで滑膜細胞の過増殖を引き起こし、RAの発症因子となることを示した。さらにシノビオリンはp53や、ミトコンドリアの生成と機能制御に重要なPGC-1β、Nrf2を基質とすることを明らかとし、2つのアポトーシス経路とミトコンドリアを介したエネルギー代謝を制御することを示した。以上のシノビオリンの機能は、がん細胞を特徴づける性質と相似しているため、本研究ではがん細胞と滑膜細胞の共通点からみたシノビオリンのトコンドリア制御を介した滑膜細胞の生理機能とその生物学的意義の解明を試みることを目的とした。 具体的には、RA滑膜細胞を用いて、RAではシノビオリンを介したミトコンドリア制御がどのようになっているのかをsiRNA、各種変異体シノビオリン発現プラスミド、シノビオリン阻害剤を用いて検討し、また滑膜細胞特異的シノビオリン遺伝子欠損(KO)マウスを作製し、関節炎における個体レベルでのシノビオリンを介したミトコンドリア制御について検討を行う計画である。 今年度は、RA患者由来滑膜細胞を採取するとともに、Prg4プロモーター制御下でCreを発現するマウスをシノビオリンfloxedマウスと掛け合わせることで滑膜細胞特異的シノビオリンKOマウスを作製した。さらに7週齢の時点でタモキシフェンを腹腔内投与しシノビオリンを欠損させ、観察を行った。現在のところ外見上の異常は認められなかった。また、II型コラーゲン誘発関節炎モデルを適応させるためDBA1/J系統への戻し交配をF6世代まで進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Prg4プロモーター制御下でCreを発現するマウスをシノビオリンfloxedマウスと掛け合わせることで、滑膜細胞特異的シノビオリンKOマウスを作製した。7週齢の時点でタモキシフェンを腹腔内投与し、シノビオリンを欠損させたところ外見上の異常は認められなかった。さらにこれらの滑膜細胞特異的シノビオリンKOマウスの膝関節について、病理学的解析を進めたところ、滑膜細胞が薄弱化している可能性があった。現在、観察個体を増やし、この傾向がすべての滑膜細胞特異的シノビオリンKOマウスで認められるのかを検討している段階である。 また、II型コラーゲン誘発関節炎モデルを適応させるためDBA1/J系統への戻し交配を進めているが、DBA1/J系統では、発育不良個体が多く、予定した通りの繁殖が難しかったため、予定より交配数を増やすことで対応している。現在F6世代が得られ始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、RA患者由来滑膜細胞の採取、滑膜細胞特異的シノビオリンKOマウスの作成を進める。また、DBA/1J系統へ戻し交配した滑膜細胞特異的シノビオリンKOマウスを用いてⅡ型コラーゲン誘発関節炎モデルを適応し、関節炎発症への影響を検討する。ここで得られた結果を、これまでに得られているシノビオリン遺伝子完全ヘテロKOマウスでの結果と照らし合わせ、滑膜細胞のみでシノビオリンを完全に欠損させた場合、関節炎発症に対しどのような影響を及ぼすかを検討する。 具体的な評価項目は、体重、関節炎スコア、組織学的関節炎スコアの採点、血清中抗Ⅱ型コラーゲン抗体価、炎症性サイトカインの測定とする。また膝関節より滑膜組織周辺組織を採取し、電子顕微鏡によるミトコンドリアの形態学的解析および単位面積あたりのミトコンドリアの数を計測する。さらに採取した組織よりRNAを抽出し、リアルタイムPCR法によりミトコンドリア合成、エネルギー代謝に関与する遺伝子の発現量の解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 少額の端数分を繰り越したため。 (使用計画) 次年度交付額と合算して消耗品の購入に充てる。
|