研究課題
Lysine demethylase 4B (KDM4B)は、類似したドメイン構造を有する4つのメンバー (KDM4A~4D)から成るKDM4ヒストン脱メチル化酵素ファミリーに属するタンパク質で、ヒストンH3の9番目のリジン残基のジメチル化・トリメチル化 (H3K9me2/me3)およびH3K36me2/me3、H1.4K26me2/me3に対する酵素活性を有し、エピゲノム制御に機能することが知られている。肺癌、大腸癌、乳癌などの固形腫瘍で発現が上昇しており、KDM4Bはエピゲノム制御異常を介して、これら腫瘍の発症、進展に促進的に働くと報告されている。本研究では、KDM4Bが8;21染色体転座急性骨髄性白血病で高発現していることに着目して、KDM4Bの白血病における機能を解析した。8;21転座を有するヒト白血病細胞株でKDM4Bを安定的にノックダウンしたところ、細胞増殖の著明な低下が観察された。さらに、造血細胞においてKDM4B遺伝子が欠損したマウスを作製し、骨髄細胞に8;21転座白血病の疾患責任融合遺伝子RUNX1-RUNX1T1を導入して造血コロニーアッセイを行ったところ、対照マウス由来の細胞に遺伝子導入した場合と比較して、早期にコロニー形成能の低下を認めることが明らかとなった。以上のことからKDM4Bは、8;21転座を有する白血病に対して病態促進的に機能するものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
KDM4Bが8;21転座を有する白血病に対して病態促進的な機能を有する可能性が示された。おおむね順調に進行している。
次世代シークエンサーを用いてKDM4Bの発現低下が遺伝子発現やエピゲノムに与える影響を解析する。また、造血細胞でKDM4Bが欠損したマウスを経時的に観察することにより、KDM4Bの機能欠失が正常造血におよぼす影響、および造血器腫瘍の病態への関与を検討することを計画している。
経費で購入予定としていた消耗品が当初の見積額より安価で購入できたことから、差額が生じ次年度使用額が発生した。次年度に主には、抗体や、機器の使用に必要な試薬など消耗品の購入に使用する予定である。
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Blood
巻: 129 ページ: 2148-2160
10.1182/blood-2016-06-724658