研究課題
当該年度は、当センターを受診した家族性高コレステロール血症 (FH) 患者229名において、LDLR・PCSK9 遺伝子のコード領域・エクソンイントロン接合部をサンガー法にて解析し、遺伝子型と臨床データの解析から、LDLR 遺伝子1アレル変異に、PCSK9 遺伝子V4I 変異もしくはE32K変異が重なることで、FH の予後が悪くなることを明らかにした (Doi, Hori et al. in preparation)。また、当院/全国のFH患者 801名について、遺伝子型と臨床データの解析により検出された変異についてACMG ガイドラインに従ってアノテーションを行った。その結果、92種類の LDLR 遺伝子変異ならびに4種類のPCSK9 遺伝子変異は病的変異であることを明らかにした。本邦のFH 患者では、PCSK9 遺伝子については、V4I 変異及びE32K 変異が高頻度に検出されるが、アノテーションにより、E32K 変異はFH の病態に寄与するがV4I 変異単独では FH の病態に寄与しないことを明らかにした (Hori et al. in revision)。また、ヒト肝細胞HepG2・HEK293株に PCSK9 E32K/V4I 変異体を導入し、LDLRの発現・活性、PCSK9の発現・分泌量を調べたが野生型と差は認められなかった (Hori et al. in preparation)。しかしながら、この実験系ではLDLR 遺伝子は正常であり、LDLR 遺伝子1アレル変異を有する患者におけるPCSK9 遺伝子E32K・V4I 変異のFHの病態への寄与は不明である。そこで、患者の末梢血から iPS 細胞を樹立する技術を確立し、LDLR 遺伝子1アレル変異とPCSK9 遺伝子V4I 変異を有する家系について、iPS 細胞由来の肝細胞の機能解析のため、研究同意を取得してiPS 細胞を樹立している。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、本邦のFH で検出された LDLR・PCSK9 遺伝子のアノテーションを行い、現在投稿論文を修正している (Hori et al. in revision)。また、PCSK9遺伝子V4I 変異ならびに E32K 変異については、マウスではこの変異部位のアミノ酸配列がヒトの配列と一致しないことから、LDLR 遺伝子変異ならびにPCSK9 遺伝子V4I 変異もしくはE32K 変異を有する患者について iPS 細胞樹立後、肝細胞を作製して機能解析することとした。また、マウスでは血中のコレステロールの大部分がHDLに存在しており、ヒトのリポ蛋白質代謝と大きく異なり、動脈硬化も起こりにくい。マウスではHDL 中のコレステロールを VLDL や LDL に積み替えて末梢で利用するためのコレステリルエステル輸送タンパク (CETP) 蛋白質が欠損していることがこの理由であり、ヒトのリポ蛋白質代謝と同様のモデルとして、hCETP 遺伝子改変マウスを作製し、hPCSK9 遺伝子改変マウスと交配することにした。このため、研究計画の内容とは異なるが、おおむね順調に進展していると考える。
LDLR 遺伝子1アレル変異とPCSK9 遺伝子変異を有する家系について、iPS 細胞から肝細胞を作製し、機能評価を行う。その結果、本邦特有の PCSK9 遺伝子変異が FH や脂質異常症の病態に与える影響を明らかにする。
本年度は主に本邦で検出されるLDLR・PCSK9遺伝子変異のアノテーションを実施し、論文作成・投稿したため、次年度使用額が生じた。残高は、ヒトFH疾患モデル作製のための iPS 細胞樹立、肝細胞作製やhCETPマウスの作製費用に充てる。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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