研究課題
当センターにてFH遺伝子 (LDLR・PCSK9) 解析を実施した20歳以上のFH患者724例の中から、糖尿病とPCSK9遺伝子V4I/E32K変異との関連について検討した。その結果、LDLR・ PCSK9両遺伝子に変異を認めない群 (変異なし群: n=248)では糖尿病罹患者の割合が19%であることに対し、PCSK9遺伝子E32K変異群 (n=49)では2% (p<0.01vs変異なし群)、V4I変異群 (n=9)では0%であった。LDLR遺伝子変異群 (n=412) においても糖尿病罹患者の割合は8.3% (p<0.0001 vs変異なし群) であることから、LDLR遺伝子変異やPCSK9遺伝子変異群では変異なし群に比較して糖尿病罹患率が低下していた。また、PCSK9遺伝子E32K変異はFHの病態に寄与するが、FHの大きな特徴であるアキレス腱肥厚の頻度については、LDLR 遺伝子変異群では77% であることに対し、PCSK9 遺伝子E32K変異群では44% (p<0.01 vs LDLR 遺伝子変異群) と低く、LDL-C値の上昇もLDLR 遺伝子変異群に比較して軽度であることから、FH と診断されにくい。しかしながら、PCSK9 遺伝子E32K変異は日本人の一般人口において冠動脈疾患のリスクとなることが報告されていること (Tajima et al. Sci. Rep. 2018)から、FH遺伝子解析が重要であると考えられる。また、LDLR 遺伝子1アレル変異に、PCSK9 遺伝子V4I /E32K変異が重なることにより予後不良であることから (Doi, Hori et al. submitted)、PCSK9遺伝子LDLR遺伝子1アレル変異とPCSK9遺伝子V4I変異を有する家系について患者由来iPS 細胞を樹立した。現在肝細胞を作製し機能評価を行っている。
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