研究課題
Y染色体上に存在する性決定遺伝子Sryの遺伝子修飾状況並びに性分化関連因子の発現状況について解析を行い,下記の点を明らかとしている.性分化関連遺伝子の修飾および発現状況の解析には,「器官培養法」が有用であるが,胎齢11.2日(尾体節数15)未満の性腺を用いると精巣化が進行しないとされていた.適切な培養条件を探索することで,性決定前(胎齢10.5日:尾体節数8)のマウス未分化XY性腺内の広範な領域に精巣化が誘導され,より幼弱な個体(尾体節数6)からの部分的な精巣化も認められた[論文1,発表5].本培養法により発現制御機構の解明に有効な,Sry発現前の未分化性腺からの器官培養が可能となった.性分化撹乱動物の表現型から,雄性化に重要な胎齢11.0日付近におけるSry発現の差異が想定された.健常雄個体を用いた詳細な検討により,Sry発現の時期や分布には系統差が存在し,性腺の頭尾方向および腹背方向に加えて,内外側方向にも差異が存在すること,加えて,C57BL/6N(B6N)系統では左性腺におけるSry発現が先行するがICR系統ではそのような特異性が存在しないことが明らかとなった.性決定・性分化機構の解明にはマウスが大きく寄与しているが,その遺伝的背景を考慮すべき重要性が示された.加えて,健常雄個体間においても発現差が大きいことから,Sryの遺伝子配列のみならずその制御因子まで含む広汎なエピジェネティクな影響が推測された[発表1,3,4;投稿中].Poschiavinus種由来のY染色体を有するB6マウスに見られる性スペクトラムが,マウス亜系統間で異なることを2018年度の段階で明らかとしたが[Yokoyama et al. 2019],その性分化の破綻が既知の下流因子の制御領域の影響ではないこと,さらにはSry発現も既報とは異なる可能性を提起した[発表2,6].
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Journal of Veterinary Medical Science
巻: 82 ページ: 414~421
10.1292/jvms.20-0036