研究課題/領域番号 |
17K08689
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
中林 一彦 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期病態研究部, 室長 (10415557)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / インプリンティング / クロマチン高次構造 / アレル別エピゲノム解析 |
研究実績の概要 |
インプリント遺伝子のアレル特異的遺伝子発現は、アレル特異的DNAメチル化領域(imprinted differentially methylated region, iDMR)に制御される。 iDMRメチル化状態確立における上流LTR配列の役割を解明するための比較エピゲノム解析に前年度までに開発したアンプリコンシーケンスプール法を適用し、論文発表に貢献した(Bogutz AB et al. Nat Commun. 2019 ;10:5674)。 妊娠高血圧症候群(HDP)あるいは胎児発育遅延(FGR)を伴う異常妊娠症例140例、正常妊娠39例を対象に臍帯血ならびに胎盤におけるiDMRメチル化異常を検索した。22領域のiDMRのDNAメチル化レベルを測定し、HDP群ならびにFGR群では、胎盤におけるIGF2-DMR2が有意な低メチル化傾向を示すことを見出した。一方、140例中3例で、胎盤特異的にH19-DMRならびにIGF2-DMR0/IGF2-DMR2の低メチル化を呈する症例を同定し、H19の両アレル発現とIGF2の顕著な発現低下を確認した。これらの結果を論文発表した(Yamaguchi Y et al. Clin Epigenetics. 2019; 11:113)。 クロマチン高次構造解析によりマウスTead4プロモーターに相互作用するエンハンサー群を同定し論文発表した (Tomikawa J et al. Nucleic Acids Res. 2020 ;48:278-289)。B6とJF1のF1雑種胚盤胞から樹立したES細胞 (B6xJF1およびJF1xB6)についてcapture-HiC解析を実施し、アレル別データ解析によりiDMRに対してアレル特異的に相互作用するエンハンサー領域候補群を同定した。 以上のようにこれまでに本課題で開発・確立したエピゲノム解析技術を分子機序解明研究・エピゲノム診断研究に応用することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレル別のクロマチン相互作用解析を実施する体制を計画通り整備し、iDMRにアレル特異的に相互作用するゲノム領域の網羅的同定に成功した。 iDMR群を対象としたアンプリコンシーケンス法によるバイサルファイトシーケンス解析系の有用性を示すこと、異常妊娠の胎盤検体を対象としたiDMRメチル化解析を実施し疾患に関連するエピゲノム変異を同定することにも成功した。 このようにiDMRを対象としたエピゲノム解析技術の確立とその応用の両方でバランスよく成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ベンチトップ型次世代シーケンサーを使ったアンプリコンシーケンスによる簡便なバイサルファイトシーケンス解析(データ取得実験系ならびにデータ解析系)を実験系研究者が容易に導入できるよう、その詳細な方法を論文などの形で発表することを目指す。 同定したiDMR関連エンハンサー候補について、ゲノム編集による当該領域欠失マウス作出・表現型解析などを通じて、それらの機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に従って研究を遂行する過程で、シーケンスデータ取得方法をより安価な方法に切り替えるなどして経費節約に成功した。 クロマチン高次構造解析により有望なアレル特異的DMR相互作用領域候補の同定に成功し、当初計画では予定していなかったゲノム改変によるマウス個体レベルでの機能解析を2020年度に実施したく延長申請した。
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