研究課題/領域番号 |
17K08690
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
黒木 陽子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, その他 (10344037)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サブテロメア / ゲノム難解読 / ロングリードシークエンサー / サブテロメア関連疾患 |
研究実績の概要 |
多発奇形や精神遅滞などの疾患と関与することが知られているヒトサブテロメア領域は、様々なタイプの反復配列が混在し、ヒトゲノムの中でも解析が難しい領域として知られている。ヒトゲノムの参照配列におけるサブテロメア領域のデータは、配列の制度が不十分な上に、未解読な領域が多く存在する。このような状況を踏まえ、本研究では、ヒトサブテロメア領域のゲノム構造解析を行い、この領域のゲノム構造基盤を整備するとともに、健常人における多様性を明らかにする。これらの解析を通じて、サブテロメア領域の構造解析に特化した解析手法を構築する。健常人におけるゲノム構造を明らかにした上で、奇形、精神遅滞などの患者を対象としたゲノム解析を行い、患者におけるゲノム構造異常の特定と原因遺伝子の探索を行う。 初年度である本年度は、申請者が保有するヒトのサブテロメア領域由来のゲノムクローンについて、ロングリードシークエンサーによる配列データを取得し、ヒトゲノムの難解読領域の一つとして知られるサブテロメア領域の高精度な配列データを構築することを目標として研究を実施した。 ロングリードシークエンサーによる配列データの取得に成功し、データの精査を進めたところ、ロングリードシークエンサーのデータのみのアセンブルでは、配列読み取りエラーの可能性を否めず、異なる手法でエラー補正を行う必要性が出てきた。そこで、現在、ショートリードシークエンサーによる配列データ取得に向けて、準備を進めている。 配列データ解析と並行し、ヒトゲノム参照配列におけるサブテロメア領域のデータ整備状況を調べている。特に、我々が解析しているクローンが位置するゲノム領域について、データの新規性、既知配列が存在した場合には既知配列と我々が取得した配列データの比較解析を進め、将来的なデータ登録に向けた準備も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画では、ヒトのサブテロメア領域由来の候補クローン、180個について、クローンの末端配列を調べ、片方の末端にテロメア配列をもつことを確認した上で、ロングリードシークエンサーによる配列解析を行うことを目標に研究を進めてきた。これまでに、約半数にあたる100クローンについて、上記の解析を完了し、サブテロメア領域由来のクローンであると確認できた12クローンについては、ロングリードシークエンサーにようる配列解析を完了し、現在、データの精査を行っている。 ロングリードシークエンサーを用いたゲノムクローンの配列解析では、クローンごとに異なるインデックスを割り当てたゲノムライブラリーを作成し、12クローンをまとめて、1つのSMRT cellでシークエンスを実施した。その結果、各クローンとも、500倍以上のゲノムカバー率を示すデータが得られ、クローンのインサート領域を網羅する配列データを取得することができた。現在、配列データの詳細な解析を進めているが、アセンブル後の配列データを高精度な配列データとして完成度を高めていくには、ショートリードシークエンサーによるデータ補正の必要性を感じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、研究申請時の計画と大きな変更はなく、研究を進めていく予定である。今後も引き続き、サブテロメア領域由来のゲノムクローンの配列データ取得とクローンインサートの完成度の高い配列データの構築を進めていく。配列の完成度を高めるために、ロングリードシークエンサーの配列データをショートリードシークエンサーの配列データで補正し、読み取りエラーのの補正を行うことを計画している。 ヒトゲノム参照配列におけるサブテロメア領域のデータ整備状況をまとめ、解析終了後に、本研究によって得られた配列データのヒトゲノム参照配列への統合について、準備を進めていく予定である。 また、次年度は、サブテロメア関連疾患の患者検体の収集に着手し、これらの疾患の原因究明と疾患の診断に資するゲノム解析手法の構築を目指して研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外から輸入している試薬の納品が遅れたため、購入予定の試薬を購入できなかった。また、機器の故障により、一時的に、研究を止めざるを得ない状況になったことと、機器の修理代金(その他)の経費が、予想を超えた金額になってしまった。
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