研究課題
癌組織の多くの部分は癌細胞以外の間質細胞と細胞外基質で占められている。応募者は間質細胞の内マクロファージに着目して、これまで食道扁平上皮癌微小環境が浸潤マクロファージを腫瘍関連マクロファージ(TAM)に分化させるとともに、特異的分子の発現誘導により悪性度を高める可能性を報告した。さらに、食道扁平上皮癌培養細胞上清を骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に作用させたところ、αSMA陽性がん関連線維芽細胞(CAF)様分化を認め、食道扁平上皮癌微小環境における癌細胞・CAF間クロストークの存在が示唆された。これらの成果を発展させ、癌細胞-TAM-CAFの相互作用の解析を共培養モデルの構築により解析し、分子病態における意義を明らかにするとともに、抽出された作働分子発現の臨床検体による検証を通じて組織としての食道扁平上皮癌の増殖・進展機構に関する分子病理学的解釈を行うことを目標に本研究を実施している。平成29年度は(1)Fibroblast activation protein(FAP)あるいはαSMA陽性CAFの癌間質における発現強度が食道扁平上皮癌の悪性度及び不良な予後と有意に相関すること、(2)食道扁平上皮癌培養上清によりBM-MSCから誘導したCAF様細胞が共培養により癌細胞や単球由来マクロファージの増殖、運動を促進すること、(3)CAF様細胞との共培養で単球由来マクロファージに腫瘍促進性M2形質が誘導されること、(4)サイトカインアレイならびにELISA解析により、CCL2、CXCL8、IL6分泌がCAF様細胞で誘導されており、癌細胞やマクロファージとの相互作用の責任分子である可能性が示唆されたことを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究計画は、食道扁平上皮癌の発生・増殖・進展における線維芽細胞・マクロファージ/癌細胞相互作用を培養モデル系で解析し、分子病態を明らかにするとともに、臨床検体を用いた検証を通して病理学的な意義づけを行う事を目的とし、以下の3つの研究を並行して実施している。研究1.食道扁平上皮癌細胞培養上清により誘導されたCAF様細胞・TAM様細胞に特異的に発現変化する分子の解析研究2.CAF様細胞-TAM様細胞-癌細胞相互作用と臨床病理学的意義の解析研究3.CAF様細胞・TAM様細胞を誘導する食道扁平上皮癌由来分子群の同定平成29年度の研究活動により研究2はほぼ完了、研究1のCAF様細胞に特異的に発現変化する分子の抽出が完了し、全計画の約50%を達成していると評価する。
平成30年度以降は、研究1で得られたCAF様細胞で特異的に発現変化する分子(CCL2、CXCL8、IL6)の機能解析を行うとともに、TAM様細胞に特異的に発現変化する分子の同定を進める。また、研究3のCAF様細胞・TAM様細胞を誘導する食道扁平上皮癌由来分子群の同定にも着手する。
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