研究課題
応募者は間質細胞の内マクロファージ(Mφ)に着目して、これまで食道扁平上皮癌微小環境が浸潤Mφを腫瘍随伴Mφ(TAM)に分化させるとともに、特異的分子の発現誘導により悪性度を高める可能性を報告した。さらに、食道扁平上皮癌培養細胞上清を骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に作用させたところ、αSMA陽性がん関連線維芽細胞(CAF)様分化を認め、食道扁平上皮癌微小環境における癌細胞・CAF間クロストークの存在が示唆された。これらの成果を発展させ、本研究では癌細胞-TAM-CAFの相互作用の解析を共培養モデルの構築により解析し、分子病態における意義を明らかにするとともに、抽出された作働分子発現の臨床検体による検証を通じて組織としての食道扁平上皮癌の増殖・進展機構に関する分子病理学的解釈を行うことを目標としている。平成30年度はCAF様細胞に誘導されるfibroblast activation protein (FAP)がPTEN/Akt, MEK/Erkおよび下流のNF-κB, β-cateninシグナルを活性化することによりCCL2やIL-6の分泌が促進され、癌細胞の運動・浸潤能やたMφのTAM様分化と運動能亢進を引き起こし、腫瘍微小環境形成に寄与していることを明らかにした。さらに、CAF様分化過程で誘導される分子としてplasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)を抽出し、癌・間質相互作用における役割を解析中である。TAMとの共培養で癌細胞に誘導される分子として抽出したannexin A10 (ANXA10)はAkt, MEK/Erkシグナル系を介して癌細胞の増殖を促進し、ANXA10の高発現は食道扁平上皮癌の壁深達度、TAM浸潤密度および不良な無病生存率と有意に相関する事を明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究計画は、食道扁平上皮癌の発生・増殖・進展における線維芽細胞・マクロファージ/癌細胞相互作用を培養モデル系で解析し、分子病態を明らかにするとともに、臨床検体を用いた検証を通して病理学的な意義づけを行う事を目的とし、以下の3つの研究を並行して実施している。研究1.食道扁平上皮癌細胞培養上清により誘導されたCAF様細胞・TAM様細胞に特異的に発現変化する分子の解析研究2.CAF様細胞-TAM様細胞-癌細胞相互作用と臨床病理学的意義の解析研究3.CAF様細胞・TAM様細胞を誘導する食道扁平上皮癌由来分子群の同定平成29から30年度の研究活動により研究1・2がほぼ完了し、その内容については2編の論文を発表した。全計画の約75%を達成していると評価する。
2019年度以降は、PAI1の腫瘍生物学的意義についての解析をさらに推進するとともに、研究3のCAF様細胞・TAM様細胞を誘導する食道扁平上皮癌由来分子群の同定に務める。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (23件) (うち招待講演 1件)
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