研究実績の概要 |
Epstein-Barrウイルス(EBV)はほとんどの成人に潜伏感染しているヒトヘルペスウイルスである。主としてB cellに潜伏感染し、その再活性化により宿主B cellの形質細胞への分化と抗体の分泌が誘導される。EBV再活性化に誘導される抗体産生は、胚中心・骨髄を介する抗体産生とは別の抗体産生経路である。 本研究はEBV再活性化の抑制による自己免疫疾患の予防・治療をめざしており、当初計画では患者、健常者のEBVゲノムシークエンスを予定していた。しかし研究を進めるなかで、EBV再活性化によって産生されたIgMの病態予測における重要性と、IgMによる自己免疫疾患発症機序の詳細解明の手掛かりを得、これらを先に検討する必要が生じた。これらに、未使用のシークエンス費用をあてるため、延長を申請したものである。 今年度(令和2年度: 2020年度)はEBV再活性化によって産生された自己抗体であるIgM型のTSHレセプター抗体の分離精製に注力し、回収に成功した。 この自己抗体の機能についての検討を第94回日本薬理学会年会(Web参加)にて発表した。また、今までの研究成果について、Microorganisms誌(IF: 4.152)にreviewを投稿し掲載された(Nagata K, Hayashi K., Epstein-Barr virus reactivation-induced immunoglobulin production: Significance on autoimmunity., Microorganisms 8 (12): E1875, 2020)。
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