研究課題/領域番号 |
17K08695
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
村上 和成 大分大学, 医学部, 教授 (00239485)
|
研究分担者 |
兒玉 雅明 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (20332893)
泥谷 直樹 大分大学, 医学部, 准教授 (80305036)
守山 正胤 大分大学, 医学部, 教授 (90239707)
沖本 忠義 大分大学, 医学部, 講師 (90381037)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 膵癌 / ZNF395 / 発現誘導 / 増殖能 |
研究実績の概要 |
これまでに私たちは、膵上皮内癌が浸潤癌に進展する際に8番染色体短腕(8p)が高頻度に欠失することを報告した。さらに、8p欠失に伴うZNF395遺伝子の発現低下が進展に関与する可能性を見出した。本年度はドキシサイクリン誘導性ZNF395発現膵癌細胞株を樹立して、膵癌におけるZNF395発現低下の機能的意義を明らかにした。 1.ドキシサイクリン誘導性ZNF395発現膵癌細胞株の樹立 ZNF395 cDNAをpTRIPZベクター (Thermo Fisher)に挿入して、ドキシサイクリン誘導下でZNF395を発現するプラスミドを構築した。これを、8p欠失によりZNF395発現低下している膵癌細胞株PANC-1に導入し、ピューロマイシンで選別後、耐性株を得た。樹立した細胞株はドキシサイクリン添加後3時間でZNF395タンパクの発現が誘導されることを観察した。 2. ZNF395誘導による増殖能への影響 ZNF395発現誘導開始後3日目より膵癌細胞の増殖は有意に抑制された。マイクロアレイを用いた網羅的発現解析を行い、ZNF395発現誘導によって発現変動する遺伝子を抽出した。抽出された遺伝子の中には、がん抑制遺伝子として増殖や浸潤を制御することが報告されているものも含まれていた。現在、これらの遺伝子の機能解析を進めている。また、ドキシサイクリン誘導性ZNF395発現膵癌細胞株を免疫不全マウスに同所移植して、in vivoにおける腫瘍形成能や浸潤能、生存期間の変化等を観察しているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画はドキシサイクリン誘導性ZNF395発現膵癌細胞株の樹立と、それを用いた機能解析であり、具体的な実施項目は以下のとおりである。 1.細胞株の樹立 2.機能(増殖能、生存能、浸潤能、遊走能)解析 3.免疫不全マウスへの同所移植モデルの構築と機能解析 このうち1については、目的の細胞株を複数樹立できた。さらにこれらを用いて2の機能解析を実施して、ZNF395は主に増殖を制御していることを明らかにした。3については、現在、移植して腫瘍の増殖をin vivo imagingにより経時的に観察しているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果から、ZNF395は膵上皮細胞で増殖を制御する分子として機能しており、その発現が低下することで癌細胞は異常な増殖能を獲得することが示唆された。今後は、ZNF395の発現低下によりどのようなシグナルパスウェイが活性化されるのか、そのパスウェイを構成する分子の中で新たな治療標的となり得るものが存在するのかについて明らかにする。 1.すでに施行している網羅的発現解析のデータをパスウェイ解析データベースに連携して、ZNF395分子が担うシグナルパスウェイの概要を得る。その中から標的分子候補を抽出して、特異的阻害剤が存在する分子があれば、その阻害剤の有効性をin vitroで検証する。 2.in vitroで有効性を確認された阻害剤について、同所移植モデルを用いて、in vivoで治療効果を検証する。腫瘤形成後に阻害剤を投与(経口、腹腔)して、腫瘤の縮小効果や遠隔臓器(肝、肺、脳など)への転移抑制効果、生存期間の延長効果などを調べる。
|