研究課題
8番染色体短腕(8p)に伴うZNF395の発現低下により膵癌細胞は増殖能を獲得して浸潤癌へ進展するとの仮説を証明するために、本年度は、樹立したドキシサイクリン誘導性ZNF395発現膵癌細胞株を用いて、ZNF395の発現誘導に伴う発現プロファイルの変化を網羅的に解析した。また、昨年度に引き続いて、膵癌切除検体におけるZNF395タンパクの発現動態を調べた。今回は特に、浸潤癌部と前癌病変部の発現レベルの相違に注目した。1. ZNF395誘導による遺伝子発現プロファイルの変動ドキシサイクリンによるZNF395誘導前後の細胞からRNAを回収して、マイクロアレイを用いた発現解析を施行した。その結果、ZNF395の発現誘導に伴って有意に発現変動する遺伝子群を抽出した。これらの遺伝子群のパスウェイ解析を行うと、変動した遺伝子群は細胞増殖や細胞周期、細胞分裂などに関わることが判明した。このことは、昨年度、細胞生物学的研究から得られた知見(ZNF395は細胞周期を遅延させて増殖を抑制する)と合致していた。以上のことから、ZNF395は膵管細胞において増殖制御に関わるがん抑制遺伝子であることがわかった。2.膵癌組織におけるZNF395タンパクの発現動態(浸潤癌と前癌病変の比較)ZNF395特異的抗体を用いて当大学附属病院にて切除された膵癌検体90例の免疫組織化学を施行した。全例で、ZNF395タンパクは正常膵管上皮および腺房細胞の細胞質で発現されていた。また、前癌病変(低悪性度病変および高悪性度病変)においてもZNF395の発現は維持されていることを確認した。これに対して浸潤癌では、有意に発現レベルが低下しており、約6割の症例で発現低下が観察された。8p欠失に伴うZNF395の発現低下が、前癌病変から浸潤癌に進展する際に重要であることが証明された。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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