研究課題
大腸癌切除術の組織検体を用いた免疫組織化学の結果から、大部分の大腸癌はDUSP4の発現低下に伴うMAPキナーゼの活性化により浸潤することがわかった。また一部の症例では深部に浸潤してもDUSP4の発現が高レベルに保たれていたことから、これらはDUSP4非依存的に浸潤能を獲得していると考えられる。今年度は、これら2つのタイプの大腸癌それぞれについて、DUSP4の機能的意義を検討した。1. DUSP4依存性大腸癌におけるDUSP4発現低下の意義DUSP4の発現低下により浸潤能を獲得している大腸癌細胞株(SNU-503およびSNU-1033)を用いて、ドキシサイクリン誘導性にDUSP4を発現する細胞株の樹立を試みた。現在、puromycinにより目的とする細胞株を選別しているところである。樹立した細胞株を用いて、誘導前後の細胞を比較検討することで以下の項目を明らかにする。①MAPキナーゼ活性の変化、②細胞浸潤能の変化、③免疫不全マウスを用いた移植モデルの作成、④移植モデルを用いたMAPキナーゼ阻害薬の有効性の検討。2.DUSP4非依存性大腸癌におけるDUSP4発現維持の意義DUSP4を高発現している大腸癌細胞株(SNU-C5、SNU-C2AおよびHCT116)において、siRNAでDUSP4のノックダウンを試みた。予想に反してMAPキナーゼ活性の変動はなく、増殖が有意に抑制された。増殖抑制に関わる機序を検討したところ、細胞周期が遅延していることが分かった。これらの知見は、DUSP4が特定の大腸癌症例において「がん遺伝子」として機能していることを示唆している。現在、追加実験を施行しているところである。
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