研究課題
近年、子宮頸部(以下、頸部)腺癌の患者数は増加し、子宮頸癌の25%を占めている。頸部扁平上皮癌と比較して頸部腺癌では早期から浸潤・転移し、治療抵抗性が高いため、その予後は悪い。予後改善のため、治療標的として設定可能な分子の同定や新たな治療戦略の確立が求められる。本研究では、申請者がこれまでの研究で確認した頸部腺癌における膜型エストロゲン受容体であるG protein-coupled receptor 30 (以下、GPR30)の発現とその悪性化への関与に焦点をしぼり、その役割を明らかにすることを目的としている。これまでに、頸部腺癌手術材料を用いた免疫組織化学的検討を行った。頸部腺癌の手術症例に対し、GPR30の免疫染色を行い、陽性強度・面積を評価しスコア化した。また、ER、ERαの免疫染色と評価も同時に行った。非腫瘍頸部腺上皮では、ER、ERα陽性、GPR30陰性であった。一方、頸部腺癌ではER、ERαは過半で陰性、GPR30は過半で陽性となった。病理組織学的因子との関連を解析したところ、T因子や病期とGPR30発現との間に有意な関連があった。これらの結果は現在投稿中である。並行して、頸部腺癌細胞株でのGPR30欠損株および安定発現抑制株の作製を試みた。二年間の間にCRISPR-Cas9を用い、GPR30に対する複数のgRNAを設定し、複数の細胞株を用いてGPR30欠損株の樹立を試みたが、現在までに有望な結果は得られていない。そこで、レンチウイルスを用いたshRNAによるGPR30の安定的な発現抑制株の樹立を試みたが、こちらについても有望な結果は得られていない。GPR30アゴニストの曝露により細胞株の増殖能が亢進すること、claudin-1の発現をGPR30が調整していることを明らかとし、それらの結果については論文として報告した。
2: おおむね順調に進展している
頸部腺癌手術材料を用いた免疫組織化学的検討では、良好な結果を得ることが出来ている。それらの結果をまとめたものを現在論文投稿中である。GPR30高発現株作成のため、FLAGタグしたGPR30発現ベクターを構築した。一方、GPR30の欠損株の作製には難渋している。これまでにCRSPR-Cas9を用いて欠損株の作製を、レンチウイルスシステムを用いたshRNAによる安定発現抑制株の樹立を試みているが、株化には至っていない。GPR30をターゲットにしたshRNAの導入による発現抑制効果は得られており、今後はその実験条件で検討を行う予定である。また、複数の細胞株にエストロゲン刺激、GPR30アゴニスト刺激を加えたものについて、プロテオーム解析を行っている。細胞株間で同様の挙動を示すタンパク質群の抽出を進めている。
GPR30発現抑制実験はレンチウイルスシステムを用いたshRNAの導入により行う予定である。GPR30発現抑制による増殖能、遊走能、浸潤能などの変化を解析する。また、選択的エストロゲン受容体調整薬の曝露による細胞株の変化や癌悪性化への関与の有無を明らかにする。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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