研究課題/領域番号 |
17K08699
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
千葉 英樹 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00295346)
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研究分担者 |
杉本 幸太郎 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (40791009)
柏木 維人 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50722451) [辞退]
齋藤 明 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (70791010)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 病理学 / タイト結合 / 子宮内膜癌 / クローディン / エストロゲン受容体 / クロストーク |
研究実績の概要 |
タイト結合分子クローディンファミリー(CLDNs)は様々ながんで発現異常を示し,このうちCLDN6は胚細胞腫瘍や胃腺癌,肺腺癌,卵巣癌,子宮内膜癌の一部の症例で過剰発現している.しかし,CLDN6高発現の生物学的意義は不明である.本研究では,子宮内膜癌におけるCLDN6の高発現の臨床病理学的意義,がん悪性形質に及ぼす影響とその分子メカニズムを明らかにした. CLDN6は子宮内膜癌の約7%の症例で高発現しており,腫瘍内不均一性を示すことがわかった.CLDN6高発現症例の5年生存率は30%と低発現群の90%に比べて著しく低く,脈管侵襲やリンパ節転移及び遠隔転移等様々な臨床病理学的因子とCLDN6高発現との関連性が見られた.さらに多変量解析では、CLDN6高発現が強力で独立した予後不良因子であることが明らかになった(ハザード比6.83). 培養子宮内膜癌細胞株を用いた検討では,過剰なCLDN6の対合が子宮内膜癌細胞の増殖能と遊走能を亢進することがわかった.一方で,この影響はERαノックアウト細胞株で消失したことから,過剰なCLDN6シグナルによる悪性形質増強機構にはERαが必要であると考えられた.CLDN6過剰発現は担癌マウスにおいても腫瘍の増大や浸潤傾向の増強を引き起こしており,CLDN6による癌悪性形質増強がin vitroのみならずin vivoでも再現された.またRNAシークエンスの結果,CLDN6によって制御される下流分子には癌悪性形質と関連するものが多数含まれており,ERα依存性の異なる少なくとも2群に分類された.さらにCLDN6シグナルはERα-S518に帰結し,子宮内膜癌の悪性形質を亢進することを見出した. 本研究により,CLDN6の対合に端を発する細胞接着シグナルがERαとクロストークして子宮内膜癌の悪性形質増強に関わっていることが強く示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究を進めた結果,CLDN6シグナルはERα-S518に帰結し,生理的濃度のエストロゲンと相乗的且つ顕著ににERの転写活性を亢進させることを見出した.そこで、エストロゲン依存性であることの多い乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌において、ERα-S518リン酸化の意義を検討中である。また、このセリンリン酸化部位はヒト核内受容体44種類中14種類で保存されているが、国内外で全く報告されていない。このように当初の想定を越えて、研究が展開しているため。
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今後の研究の推進方策 |
ERα-S518リン酸化を検出できるラットモノクロナール抗体をスクリーニング中である。パラフィン標本で使用可能なクローンを用いて、ホルモン依存性癌(乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌)における臨床病理学的意義を明らかにする。また引き続き、子宮内膜癌細胞株を用いた機能解析を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の210,000円は、前倒し請求で得られた助成金の残金である。物品費及び旅費として上半期に使用予定である。
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