研究実績の概要 |
本研究は,子宮癌肉腫(UCS)におけるS100A4の役割を検索した.S100A4過剰発現細胞は癌幹細胞(CSC)の特性を有し,細胞増殖能の減少と移動能の増加を示した.この特性は,S100A4をノックダウンで消失した.ショットガンプロテオミクス法により,S100A4は非筋細胞ミオシンⅡ(NMⅡ)との結合が明らかになった.ブレビスタチンによりNMⅡを特異的に阻害すると,S100A4の過剰発現が誘導され,線維芽細胞様の形態が惹起された.UCSにおいて,S100A4スコアは癌肉腫成分よりも肉腫成分で有意に高く,ALDH1, Slug, Vimentinスコアと正の相関を示す一方,Ki-67とは負の相関を示した.これらの結果より,S100A4/NMⅡシグナル経路はEMT/CSCの発現や維持に関与し,また細胞増殖能や移動能を変化させる可能性が示唆された. <最終年度の成果> 子宮癌肉腫での免疫染色の所見:S100A4とALDH1は核と細胞質に染色性を示し,NMⅡAとビメンチンは細胞質に染色性を示し,pp65, Sox2, Slug, Ki-67, E-cadherinは核もしくは細胞膜に染色性を示した.これらは,子宮癌肉腫において,癌成分と肉腫成分の両方で同様にみられた.癌成分よりも,肉腫成分において,S100A4, ALDH1, Slug, ビメンチンのIHCスコアの平均値は高かった.一方,EカドヘリンとKi-67は逆の傾向であった.NMⅡAとpp65については,両成分間で有意な差はなかった.子宮癌肉腫において,S100A4スコアの平均値は,ALDH1, Slug, ALDH1スコアと正の相関を示した.一方,Ki-67とは負の相関を示した.また,ビメンチン,Slug, ALDH1間でも正の相関がみられたが,NMⅡAとpp65との相関関係はみられなかった.
|