研究課題/領域番号 |
17K08704
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
八尾 隆史 順天堂大学, 医学部, 教授 (20243933)
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研究分担者 |
齋藤 剛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80439736)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胎児消化管類似癌 / 胃癌 / 肝様腺癌 / TP53 / LOH / メチル化 / TET1 / 5-hmC |
研究実績の概要 |
胎児腸管のマーカー(AFP、glypican 3, SALL4)の免疫染色を施行し、これらのマーカーのうち少なくとも一つが陽性なもののうち、「組織学的に粘液産生がなくグリコーゲンを含む淡明な細胞質からなる腺癌」を胃胎児消化管上皮類似癌(GAED)と定義し、高悪性度の癌であることを報告した。平成29年度の解析では、外科的に切除された胃癌症例からGAED 51症例が収集され、GAEDは高悪性度の癌であることが再確認された。さらに充実型増殖を示すタイプはかつて肝様腺癌(HAC)に分類されたものが含まれるが、充実型成分やAFP発現の有無と予後や臨床病理学的特徴の差はみられなかったことから、かつてHACとされていたものは、充実型増殖を示すGAEDの一亜型に分類するのが妥当であることが新たに示唆された。 また、TP53遺伝子変異が高頻度であり、通常型癌と比較してHER2過剰発現も有意に高頻度であることも判明した(Akazawa Y et al, Hum Pathol 2018)。 平成30年度の解析では、TP53の不活化機構に関する研究を行った。GAEDにおいてTP53のプロモーターのメチル化は18%、LOHは37.2%に認め、GAEDのTP53の不活化機構はTP53の変異に加えて、TP53のLOHやメチル化が原因の一部と考えられた。 また、メチル化関連タンパクTET1と5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hmC)の発現低下・減弱はそれぞれ56.9%、54.9%に認め、これらの減弱を認めた群は保持群と比べて有意に予後が悪い傾向であることも示された(Yatagai N et al. Virchow Arch 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
解析に十分は症例(51例)が収集され、臨床病理学的特徴のさらに詳細な解析が可能となり、胎児消化管上皮類似癌(GAED)が高悪性度であることの再確認がで き、さらに肝様腺癌(HAC)とGAEDとの関係も明らかとなった。さらに次世代シークエンサーを用いた解析も順調に行われ、前年度の解析結果は英文誌に受理・掲載された(Akazawa Y et al, Hum Pathol 2018)。その後の解析結果からも興味ある結果が得られ、英文誌に受理・掲載されている(Yatagai N et al. Virchow Arch 2019)。さらなる興味ある解析結果も得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き特徴的な遺伝子異常の有無の検索と悪性度に関わる分子の探索を行う。本課題には含まれていないが、今後大腸癌における同様な解析も必要であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学内の研究棟建築および完成に伴い実験室の1年間に2階の移動(引っ越し)のため、研究ができない時期が合わせて1ヶ月ほどあったことと試薬代が予想より少なく済んだことによるものと考えます。もともと、次年度は少なめに計上していましたので、次年度の研究費として十分に使用可能です、
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