研究課題
本研究では、極めて悪性度が高い唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma: SDC)を取り上げて解析する。SDCは高齢者の耳下腺に好発する比較的まれな唾液腺癌であり、乳癌に類似した病理組織像を呈する。本腫瘍は予後不良であるにもかかわらず、多数例の解析が進んでおらず、未だ有効な治療法がないのが現状である。そこで今回は、SDCにおける今後の標準治療の確立のみならず、テーラーメイド治療の実現化や、術後補助療法や手術不能例に対する新規治療法の開発に向けての基礎となる重要なデータを得ることを目的として、全国規模の多施設共同研究により集積した約150例のSDC症例の病理標本を用いて、癌遺伝子産物・癌抑制遺伝子産物・ホルモンレセプター・細胞周期関連蛋白・転写因子などの主に治療標的となり得る分子の免疫組織化学的発現や関連遺伝子の増幅・変異の有無を調べ、それらの予後を含めた臨床病理学的因子としての意義を明らかにする。当該年度には、免疫組織化学的バイオマーカー(AR,ERβ,EGFR,HER2,HER3,MUC1,PLAG1,p53,CK5/6,Ki-67,PI3K,p-Akt,p-mTOR,PTEN)発現と癌key遺伝子(TP53,PIK3CA,AKT1,K-RAS,N-RAS,H-RAS,BRAF)変異を解析し、それらの臨床病理学的意義について検討した。その結果、SDCにおいてAR,CK5/6,Ki-67,p53,p-Aktの発現が多変量解析にて有意に予後と関連していた。さらに、SDCはAR,HER2,Ki-67,CK5/6,EGFRの発現によって4群に分類することが予後や治療面で有用であった。また、SDCはTP53,PIK3CA,H-RASの遺伝子変異率が高く、とくにTP53変異は有意に予後と関連していた。得られた結果は将来的にSDCの予後改善に繋がるなど、意義深い。
1: 当初の計画以上に進展している
当該年度内には申請書に記載した研究内容の約2/3を成し遂げ、これらの成果は主に国際誌に英文論文として報告(一部印刷中)した。
今後は、解析が終了したデータと治療効果との関連性をみたり、さらには免疫チェックポイント分子の発現や癌免疫微小環境といった領域にも研究の幅を広げて解析して行き、これらの成果は順次国際誌に英文論文として報告する。
当初の予定よりも物品の費用を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。平成30年度には、研究のさらなる推進のため、とくに免疫組織化学染色や遺伝子解析に必要な物品を中心に、次年度分として請求した助成金と合わせて使用する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (28件) (うち査読あり 24件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件)
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