研究課題/領域番号 |
17K08705
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
長尾 俊孝 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (90276709)
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研究分担者 |
多田 雄一郎 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (70292430)
山崎 一人 帝京大学, 医学部, 教授 (60302519)
平井 秀明 東京医科大学, 医学部, 助教 (00770744)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 唾液腺癌 / バイオマーカー / 人体病理学 / 予後 / 唾液腺導管癌 / HER2 / AR / FOXA1 |
研究実績の概要 |
当該年度では、主に唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma:SDC)におけるForkhead box protein A1(FOXA1)の機能解析を行った。 FOXA1は転写因子の1つで、性ホルモン標的遺伝子の転写調整に関わっている。代表的なホルモン依存性癌である乳癌や前立腺癌では、FOXA1の発現と予後を含めた臨床病理学的因子との関連性が報告されている。一方、SDCは稀な高悪性度腫瘍で組織学的に浸潤性乳管癌と類似した像を呈し、アンドロゲンレセプター(AR)陽性を示すという特徴を有するが、FOXA1についての解析はほとんどなされていない。 多施設共同研究で病理学的にSDCと診断された142例を対象とした。免疫組織化学染色でSDCをFOXA1高発現群と低発現群に分けた。FOXA1発現と、予後を含む臨床病理学的因子、ARやPI3Kシグナル伝達経路を含むバイオマーカーとの関連を統計学的に解析した。 SDC症例は種々の程度にFOXA1発現を示し、142例中128例で発現が確認された。ARとFOXA1の発現率を連続変数として比較すると両者は正の相関を示した。PI3K陽性、p-mTOR陽性、PTEN lossは、FOXA1高発現群に多く認められた。多変量解析では、FOXA1高発現群が低発現群に比べて全生存率および無増悪生存率が有意に良好であり、FOXA1が独立した予後因子であった。 今回の検討では、乳癌と同様に、SDCにおいてもFOXA1高発現群は低発現群に比して予後良好であることが示された。またFOXA1発現とPI3Kシグナル伝達経路との相互作用は肝癌でも指摘されており、SDCでも同様の関連性が示唆された。FOXA1の癌細胞内における機能やメカニズムは十分解明されておらず、将来的な更なる検討が期待される。これらのデータは、SDCの治療戦略の発展に寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究内容の約3/4を実施し、これらの成果を主に国際誌に英文論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
SDCにおける抗AR療法や抗HER2療法の効果予測因子の探索を行ったり、免疫チェックポイント分子の発現を含む癌免疫微小環境の解析といった分野にも研究の幅を広げ、これらの成果を順次国際誌に英語論文として報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも物品の費用を抑えることができ、次年度使用額が生じた。平成31年度は、この次年度使用額を、主に免疫組織化学染色や遺伝子解析、画像解析に用いる消耗品の購入に充て、研究を更に推進させる。
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