研究課題/領域番号 |
17K08706
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
稲熊 真悟 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80410786)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CD274 / 浸潤 / 細胞増殖 |
研究実績の概要 |
膵臓癌細胞株よりCD274を高発現する分画を分取し、浸潤遊走能、細胞分裂能を検討した結果、CD274高発現分画が高い浸潤遊走能、細胞増殖活性を有することを見出した。また、CD274高発現/低発現分画における遺伝子発現を網羅的に比較解析し、各分画において、特異的発現を示す遺伝子群を抽出した。これら、特異的発現を示す遺伝子群より、いくつかの遺伝子を選択し膵臓癌細胞株における発現を消失させ、浸潤遊走能や細胞増殖活性、免疫不全マウスにおける造腫瘍能などの、腫瘍生物学的特徴を検討することを予定しており、CRISPR/Cas9 systemを用いた遺伝子発現消失細胞株の樹立を進めている。 アメリカ国立衛生研究所、国立がん研究所との共同研究として、腫瘍組織アレイを用いたCD274発現解析を行い、大腸癌の原発巣では、BRAF遺伝子変異やミスマッチ修復欠損など、Serrated pathway経由で発生した癌腫がCD274高発現を呈する一方で、転移巣においては、CD274発現とこれらの特徴との関係性に乏しく、腫瘍間質由来の液性因子がCD274発現を制御している可能性を明らかにし報告した(Inaguma S, et al., J. Pathol. Clin. Res. 2017;3(4):268-278)。 研究者の所属する愛知医科大学における手術材料より、腫瘍組織アレイを作成し、免疫組織学的解析、予後解析を行う準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
膵臓癌細胞株における、CD274高発現、低発現分画の分取と浸潤遊走能や細胞増殖活性の比較など、腫瘍生物学的特徴の解析は計画通りに進んでいる。また、これらの分画における網羅的遺伝子発現解析も順調に進んでおり、各分画において特異的発現を示す遺伝子群の同定が終了している。 また、米国国立衛生研究所、国立がん研究所との共同研究として、腫瘍組織アレイを用いたCD274発現解析を行い、大腸癌の原発巣と転移巣において、同遺伝子を発現するメカニズムが異なっている可能性を明らかにし報告した(Inaguma S, et al., J. Pathol. Clin. Res. 2017;3(4):268-278)。 研究者の所属する愛知医科大学における手術材料より、腫瘍組織アレイを作成し、免疫組織学的解析、予後解析を行う準備もすでに整っている。
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今後の研究の推進方策 |
膵臓癌CD274高発現分画において特異的発現を示す遺伝子群より、いくつかの遺伝子を選択し、CRISPR/Cas9 systemを用いてその発現を消失させ、膵臓癌細胞株の浸潤遊走能や細胞増殖活性、免疫不全マウスにおける造腫瘍能など、腫瘍生物学的特徴の変化を検討する。また、これらの遺伝子の発現をヒト腫瘍組織アレイを用いて解析し、臨床病理学的特徴の解析や、予後予測因子としての有用性を検討する。 今後は、膵臓癌のみならず、大腸癌など、他の癌腫におけるCD274発現と悪性形質との関連に関しても、解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画申請時に予定していた分子生物学的実験が、予想よりも順調に進んだため、本年度の支出が低減された。当初は膵臓癌細胞株、組織を用いた研究を計画していたが、今後は大腸癌など、他の癌腫を含めた総合的な解析を進めていく予定である。
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