研究実績の概要 |
重要ながん抑制遺伝子であるTP53は、頭頸部扁平上皮癌の約70%で変異が認められ、ナンセンス変異、フレームシフト変異、プライシング異常、一部のミスセンス変異が予後不良因子と報告されている。一方、病理診断におけるp53蛋白(DO-7 clone)の免疫組織化学染色(IHC)では、強陽性(2+)・染色性の陰性(-lost)といった異常染色パターンが認められる。過去3年に当院で外科加療を行った頭頸部扁平上皮癌患者367例の切除標本のFFPE検体からDNAを抽出、Illumina社の次世代シークエンサー(MiSeq)にてTP53の全エクソン変異解析と免疫染色によるp53蛋白発現解析の融合解析を行った。結果として、TP53変異は全体の60%の症例にみとめられ、ナンセンス変異、フレームシフト変異は独立した予後不良因子であるが、ミスセンス変異は単独で予後因子とはならなかった。なお、Lostと2+の症例間で大きな差は認めなかったが、野生型とLost, 2+を併せたグループとの比較では、2年生存率、再発に優位な差が認められた。したがって、TP53エキソン配列全体の状態とp53タンパク質の表現型を詳細に調べることが、HNSCCの生物学的特性のほとんどを把握するのに効果的であった. これらの結果を元として術前の生検検体を用いた免疫染色から同一検体を用いたシームレスなTP53全エクソンシークエンス解析により、症例の確度の高い診断と予後の推定が可能となった。
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