研究実績の概要 |
これまでの我々の解析から、WNT経路の活性化に関わる遺伝子変異としてAPC, CTNNB1に加えてRNF43, RSPO融合遺伝子の重要性と、これらの新たな遺伝子変異が鋸歯状病変において特徴的であることを示してきた。現在、これらの所見をより詳細に検討する目的で、主に大腸非浸潤性病変におけるWNTシグナル経路に関連する遺伝子を中心とした変異解析を進めている。これらの遺伝子は比較的大きく、我々が検索の試料とするホルマリン固定パラフィン包埋標本においては、しばしば検索が困難である。これまでも次世代シークエンサーを利用することで解析の効率化を図ってきたが、より再現性の高い変異検出を可能とするために、複数の新しい解析方法を検討した。また、RSPO融合遺伝子の検出のための新しい方法の検討を行った。 鋸歯状病変における検討では古典的鋸歯状腺腫(traditional serrated adenoma, TSA)における検索を進めている。以前に70例のTSAを対象として遺伝子変異検索を行い報告したが(Sekine S, J Pathol. 2016)、その分子病理学的な多様性のために臨床病理学的な検討を行うためには、より多数例を対象とした検討が必要と考えられた。このため、現在、さらに約60例を加えた検討を進めている。この検討により、TSAを介した大腸発癌の臨床病理学的な特徴と分子病理学的な特性の相関を明らかにしたい。 また、鋸歯状病変以外の大腸腫瘍においても、同様の検索を行い、WNT経路の発癌における役割の再検討を行っている。
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