大腸腫瘍におけるWNT関連遺伝子変異の解析

2018 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 17K08711
• 研究機関: 国立研究開発法人国立がん研究センター
• 研究代表者: 関根 茂樹 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (10321879)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: WNT / 大腸癌 / 鋸歯状病変 / 大腸ポリープ

研究実績の概要

鋸歯状腺腫(traditional serrated adenoma, TSA)を対象とした遺伝子変異検索を行い、100例以上のポリープを用いた変異と、その臨床病理学的特徴との相関の検索をほぼ終了した。この結果からTSAの組織学的特徴とされる異所性陰窩やslit-like serrationなどの所見が、特定の遺伝子変異と相関して認められることが示された。また、高頻度に認められるWNTおよびMAPK経路の活性化に関わる遺伝子変異の間にも相関が認められ、特定のシグナル経路の活性化に関わる遺伝子変異であっても生物学的に異なる影響を示すことが示唆された。TSAは形態的に多彩なvariationを示すことが知られているが、組織学的特徴と遺伝子変異との間に相関を認めたことから、TSAの形態的多彩性は背景となる分子病理学的異常の多様性を反映しているものと考えられた。同時に、近年提唱されているmucin-rich variantなどの亜型の意義づけなどに関しても検討を行った。
SSA/P 272例を対象としてMAPK経路関連遺伝子の変異検索を行い、BRAFばかりでなくKRAS変異を有する病変が10%程度存在し、これらは特徴ある臨床病理学的特徴を示すことを明らかにした。
TSAに関連する新たな鋸歯状病変としてsuperficially serrated adenoma (SuSA)を提唱し、その疾患単位としての独立性の検討を行っている。この病変はKRAS変異とRSPO融合遺伝子を高頻度に有するという特徴を有するが、新たに蒐集したSuSAの解析を通じて新たなRSPO融合遺伝子を複数同定している。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していた鋸歯状腺腫の検索をほぼ終了し、現在、通常型腺腫を対象とした検索のための症例収集を進めている。

今後の研究の推進方策

上記の通り予定にしたがって、検体収集及び解析をすすめていく。

次年度使用額が生じた理由

主に消耗品値引き購入などにより購入額が予想より低くなったため。関連するその他の消耗品の購入に充当する。

研究成果

• [雑誌論文] Reappraisal of the genetic heterogeneity of sessile serrated adenoma/polyp (2018)
  • 著者名/発表者名: Cho H, Hashimoto T, Yoshida H, Taniguchi H, Ogawa R, Mori T, Hiraoka N, Saito Y, Sekine S
  • 雑誌名: Histopathology 巻: 73 ページ: 672-80
  • DOI: 10.1111/his.13688
  • 査読あり
• [雑誌論文] Superficially serrated adenoma: a proposal for a novel subtype of colorectal serrated lesion (2018)
  • 著者名/発表者名: Hashimoto T, Tanaka Y, Ogawa R, Mori T, Yoshida H, Taniguchi H, Hiraoka N, Kojima M, Oono Y, Saito Y, Sekine S
  • 雑誌名: Mod Pathol 巻: 31 ページ: 1588-98
  • DOI: 10.1038/s41379-018-0069-8
  • 査読あり