研究課題/領域番号 |
17K08713
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
大久保 陽一郎 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 医長 (40516267)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経内分泌腫瘍 / 神経内分泌癌 / neuroendocrine tumor / neuroendocrine neoplasm / neuroendocrine carcinoma |
研究実績の概要 |
2019年度は神経内分泌腫瘍の新たな予後予測因子の確立、浸潤・転移機構の解明および新規治療法の基盤形成を目的とし、2019年度は主に膵神経内分泌腫瘍の手術症例集積ならびに病理組織学的解析(腫瘍径、Ki-67指数および核分裂数、脈管侵襲の有無など)を行った。 膵臓において神経内分泌腫瘍は通常型膵癌 (腺癌)に次いで多い腫瘍であり、近年その疾患認知度が高まりつつあることと診断技術の向上とにより罹患率は増加傾向にある。しかしながら、機能性の有無、脈管侵襲の意義、WHO grading systemで把握しきれていない悪性度など、未だ解明されていない点も多い。さらに、従来のWHO grading systemが改訂されたことを機に、新たな臨床病理学的な解析が求められている状況にある。 本研究を通じて集積し得た、手術症例数は37例で男性7例、女性30例、手術時年齢の中央値は61歳であり、手術術式の内訳は、膵体尾部切除術が25件、膵頭十二指腸切除術が10件、膵全摘出術が1件、腫瘍核出術が1件であった。 全例の生存期中央値は111か月であり通常型膵癌と比較して予後良好ではあるが、術前から肝転移を伴う例が3例、術後肝転移再発をきたした例が8例と約1/3 (11/37, 29.7 %)で肝転移が発生していた。肝転移ありの群では肝転移なしの群と比較して有意に生存期間が短い結果となった(Kaplan-Meier plots of overall survival, p = 0.028)。また、GradingはNET G1, G2, G3, NECがそれぞれ22症例、11症例、3症例、1症例であった。斯様に肝転移は有意な予後不良因子であるが、その原因として原発巣における腫瘍の組織学的悪性度が関与している可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は膵神経内分泌腫瘍の新たな予後予測因子の確立、浸潤・転移機構の解明および新規治療法の基盤形成を目的とし、膵神経内分泌腫瘍の手術症例集積ならびに組織学的解析を主体として研究を遂行した。結果、膵NET G1, G2, G3, NEC症例をそれぞれ、22症例、11症例、3症例、1症例集積し得た。 その一方、手術症例の症例確保に苦戦しており、腫瘍径、Ki-67指数および核分裂数、脈管侵襲の有無、単位面積当たりの脈管数など、病理組織学的解析結果を有効に活かすことができていない状況にある。 今後、病理データベースではなく、診療録を基盤とした症例確保に努めるが、現時点での進捗状況としては上記の如くとした。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は膵神経内分泌腫瘍の新たな予後予測因子の確立、浸潤・転移機構の解明および新規治療法の基盤形成を目的とし、膵神経内分泌腫瘍の手術症例 37症例を集積した。 次いで、腫瘍径、Ki-67指数および核分裂数、脈管侵襲の有無、単位面積当たりの脈管数など、病理組織学的解析を遂行し得た。 今後は解析症例数の確保に努めるが、手術症例の確保が難しい場合、単変量解析による傾向把握も視野に入れて、神経内分泌腫瘍の浸潤・転移機構の解明や新規治療法確立への基盤形成を目指す また、内分泌腫瘍あるいは類縁・鑑別疾患に関しては積極的に報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は膵神経内分泌腫瘍の各種解析に取り組んだ。概ね当初の見積もりの相当の研究費を使用しているが、若干安価に消耗品を購入することができ、一部次年度使用額が生じた。 今後も科学研究費補助金の使用ルールを遵守した上で、引き続き必要項目に対して弾力的な研究費の使用を予定しているが、2020年度は病理組織学的解析ならびに研究成果報告に対する支出 (学会報告費、旅費、印刷費、論文掲載費等)を重視した計画にしている。
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