研究課題
世界的に増加している神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)であるが、生物学的特性には不明な点が多い。実際、膵・消化管NETで病理組織学的には低悪性度と判定されたにも関わらず、転移・再発を来す症例が少なくない。そのため、より正確な病態の把握が喫緊の課題である。2020年度は以前に解析した、当院において内視鏡的切除術を施行された直腸NET44症例の追加検討ならびに追跡調査を行った。その結果、内視鏡的切除術例で複数切片を対象に免疫組織学的検索を施行することで、微小な脈管侵襲も拾い上げ、高率に脈管侵襲が確認できることを確認した(静脈侵襲24%・リンパ管侵襲31%)。現行ガイドラインで脈管侵襲は追加手術の適応因子とされているが、追跡調査可能であった症例の内、追加手術未施行の全例で再発・転移例なく生存が確認できた。そのため、脈管侵襲陽性例に対する追加手術の適応には、より詳細な検証が必要であると考えられる。特に、追加手術症例の絞り込みは、低侵襲治療による患者利益と効率的な医療提供につながるため内視鏡的切除術例における脈管侵襲の意義検証は重要な位置づけにある。さらに、得られた研究成果は国内外の研究施設および実地医療機関に有益な情報基盤も提供し得るものである。一方、調査期間は5年に満たず、他院へ紹介されている症例もあるため、厳密な追跡調査結果は得られていない。また、HE染色標本のみで判明する脈管侵襲と複数切片を対象に免疫組織学的検索まで加えた詳細な検討での脈管侵襲の臨床的意義の違いについても検証が必要であり、今後さらなる調査、症例集積ならびに解析が必要である。
2: おおむね順調に進展している
2020年度は神経内分泌腫瘍の新たな治療方針を提唱すべく、直腸原発神経内分泌腫瘍の再検討ならびに追跡調査を主体とした研究を遂行した。当該腫瘍に対する内視鏡的切除術施行例を対象に解析した結果、相当数の脈管侵襲が確認された。一方、複数切片かつ免疫染色を用いた詳細な検索で辛うじて見つかる脈管侵襲の臨床的意義に関してはさらなる検証が必要であり、前述の如く追跡調査に関しても問題点が存在する。総合的に、現時点での進捗状況としては上記の如くとした。
2020年度は神経内分泌腫瘍の神経内分泌腫瘍の新たな治療方針を提唱すべく、内視鏡的切除術施行例を対象に各種解析を行った。今後は、内視鏡的切除術施行例に限らず、手術例も含め、種々の臓器における当該腫瘍の症例集積に努め、さらなる解析を施行することで神経内分泌腫瘍の浸潤・転移機構の解明や新規治療法確立への基盤形成を目指す。また、より正確な診断方法の確立に貢献すべく、内分泌あるいは類縁・鑑別疾患に関してはこれまで通り、精力的に英文誌へ報告する方針である。
2020年度は主に直腸原発神経内分泌腫瘍の各種解析に取り組んだが、当初想定していたよりも所属施設での消耗品が利用可能であり、結果的に次年度使用額が生じた。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件)
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