研究課題/領域番号 |
17K08713
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
大久保 陽一郎 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 病理診断科, 医長 (40516267)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経内分泌腫瘍 / 神経内分泌癌 / neuroendocrine tumor / neuroendocrine neoplasm |
研究実績の概要 |
希少腫瘍とされていながら、近年では本邦のみならず世界的増加している神経内分泌腫瘍であるが、広く普及している核分裂像やKi-67 labeling indexを含め、現在ある程度確立された評価項目のみでは説明しきれない生物学的悪性度が存在し、再発・転移機構には不明な点が多い。そのため、より正確な再発・転移の予測因子の解明が重要となる。 2021年度は膵神経内分泌腫瘍を主な解析対象とした。膵神経内分泌腫瘍の手術症例集積ならびに病理組織学的解析(腫瘍径、Ki-67指数および核分裂数、脈管侵襲・再発・転移の有無・予後調査など)を行った。結果、患者同意が得られた膵手術検体 41症例を集積し得た。追跡可能な範囲での生存期間中央値は約9年であったが、肝転移を中心とした遠隔転移の存在が有意な予後不良因子となった。Grading(分化度)、脈管侵襲、T因子といった既存の予後不良因子が遠隔転移に影響しているものの、症例ことのばらつきもあり、遠隔転移に影響を及ぼす因子の影響度や未知の因子の確立が今後の重要な課題となる。 また、手術症例を修正する過程で当施設 倫理委員会の承認を得た後に多施設共同研究にも参加し、pancreatic polypeptideの発現解析も行った。当施設症例からは2例の陽性症例が確認され、今後pancreatic polypeptide発現がどのような臨床病理学的影響を検討する必要がある。 その他、膵・消化管原発の神経内分泌癌の症例集積に難渋しており、まずは他臓器原発の神経内分泌癌の遺伝子学的解析を遂行した。結果、PIK3CA遺伝子変異が約1/5で検出されることを突き止めた。本成果は小AlpelisibとFulvestrantを軸とする新規治療法の基盤となり得るものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は膵神経内分泌腫瘍の再発・転移機構の解明を目指し、症例集積、病理組織学的解析、予後調査を主体とした研究を遂行した。結果、膵神経内分泌腫瘍における予後不良因子の一端は明らかになった。一方、、Grading、脈管侵襲、T因子らは既知の予後不良因子であり、今後はそれらの影響度や未知の予後不良因子の確立が課題となる。 その他、今後さらなる臨床病理学的解析が必要ではあるもののpancreatic polypeptide発現頻度や遺伝子変異の一部を解明することができた。 これらの研究成果を考慮し、現時点での進捗状況としては上記の如くとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後も神経内分泌腫瘍の再発・転移機構の解明ならびに新規治療法の確立を目指す。具体的には当該腫瘍の症例集積を継続させ、さらなる臨床病理学的解析を施行する。また、神経内分泌腫瘍が多くの臓器から発生することを考慮し、他臓器原発神経内分泌腫瘍や類縁疾患、あるいは鑑別を要する疾患に関しても解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は主に膵神経内分泌腫瘍の解析に取り組んだが、多施設共同研究では研究代表施設の研究費が利用可能であった。その他、所属施設からの補助もあり、結果的に次年度使用額が生じた。 今後も、科学研究費補助金の使用ルールを遵守した上で、引き続き必要項目に対して弾力的な研究費の使用を計画している。
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