研究課題
EBウイルスによる発癌機構を解明する上で,宿主の免疫状態がどのように関連しているかを検討する目的で研究を進めている.東京大学医学部附属病院病理部にアーカイブされている1990-2017年に採取された生検および手術検体の中で,EBER in situ hybridizationによりEBウイルス感染の有無が検索がされた症例をレビューした.その中で腫瘍細胞あるいは背景の炎症細胞にEBウイルスの感染が確認された約600例の症例を病理組織学的に検討し,腫瘍の組織型(癌,リンパ腫など)の同定や基礎疾患(臓器移植後,加齢,化学療法後など,免疫状態に関連する因子を含む)など臨床情報の検索,抽出を行った.またEBER-ISHを行い,EBウイルス陽性細胞数や分布について検討を行った.さらにその中から90例を抽出し,FirePlex miRNA assaysを用いたEBウイルス由来microRNAの網羅的発現解析,免疫組織化学的手法を用いたLMP1やEBNA2の発現パターンによる潜伏感染様式の決定,デジタルPCRによるEBウイルスのコピー数の解析も並行して行い,EBV由来microRNAの発現パターンと潜伏感染様式との関連やコピー数との関連を検討した.その結果,特定のmicroRNAの発現が腫瘍の悪性度や進行度と関連している可能性を見出した.さらに各症例において腫瘍内に浸潤する炎症細胞浸潤の種類や免疫関連分子(PD-1,PD-L1)などの発現を免疫組織化学的に検討し,腫瘍間での共通点や相違点を抽出し,これが腫瘍発生にどのように関連しているのかを明らかにすべく,検討を行っている.
3: やや遅れている
ヒト由来の組織検体を用いたmicroRNAの網羅的発現解析を行ったが,その結果の解釈に時間を要したため,in vitroでの検証に発展させる過程がやや遅れている.
現在まで行った解析結果をもとに,宿主の免疫状態とmicroRNA発現の関連についてさらに検討を加える.また発癌や免疫回避に関与している可能性のあるmicroRNAを同定し,対象症例を増やしての臨床検体での発現解析やin vitroでの癌化機構の解明を行う予定である.
本年度,in vitroでの実験の実施にやや遅れが生じたため,本年度の残額を次年度の請求分と合わせ,次年度の研究実施に充てる予定である。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 備考 (1件)
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