研究実績の概要 |
今年度はまず、ヒト膠芽腫由来細胞株T98G, U87等を用いて、細胞を高浸透圧(500 mOsm/l)の培養液に曝露した時のNFATファミリー分子群(NFATc1, NFATc2, NFATc3, NFATc4, NFAT5)の発現量(mRNAレベル)の変化をリアルタイムRT-PCR法で検討した。T98G, U87では、曝露後3時間でNFAT5発現量が上昇し始め、以後48時間まで上昇していた。U87ではNFATc1発現量の上昇も見られた。他のNFATsには大きな変動は認めず、NFAT5、場合によってはNFATc1が高浸透圧応答性NFATであると考えられた。他のグリオーマ細胞株(U251MG, YKG-1)およびHeLaにおいても、高浸透圧に応答してNFAT5発現量の増加を認めた。次に、高浸透圧以外の細胞へのストレス因子として、血清欠乏、低酸素、低pHをとりあげ、これらに対するNFAT発現変化をT98G, U87を用いて検討した。無血清培地で培養するとNFATc4とNFATc2の発現が上昇し、1%酸素環境下で培養するとNFATc4の発現が上昇した。また、培地をpH 6とした場合には、U87ではNFATc4の上昇を認めた。これらの結果から、ストレス因子の種類により応答するNFAT分子種が異なり、主としてNFAT5が高浸透圧、NFATc4がそれ以外のストレスに応答している可能性が示唆された。
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