研究課題/領域番号 |
17K08721
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木村 徳宏 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (40445200)
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研究分担者 |
池田 栄二 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30232177)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 病理学 / 脳腫瘍 / 膠芽腫 / 浸透圧 / 微小環境 |
研究実績の概要 |
今年度はまず、ヒト膠芽腫由来細胞株を高浸透圧の培養液に曝露した時のNFAT分子のタンパク量の変化を、Western blot法により検討した。NFAT5は400~500mOsm/lの高浸透圧で24時間処理すると、タンパク量が増加していた。高浸透圧以外の細胞へのストレス因子として、無血清培地、グルコース低減培地、低pH培地(pH 6)、低酸素条件(1%酸素)で細胞培養を行ったところ、グルコース欠乏、低pH、低酸素においてもNFAT5タンパクの増加が観察され、NFAT5が様々なストレス因子に対して反応している可能性が示唆された。NFATc4については、無血清培地での培養によりタンパク量の増加を認め、Western blot上では分子量がやや低下しているようなバンドパターンを示していた。蛍光免疫染色での検討によって、無血清培地での培養により、核内のNFATc4が増加していることが示唆された。死細胞から放出される物質の生細胞に与える影響を調べるためのモデルとして、培養細胞を培地に懸濁した液を凍結・融解し細胞死を起こしたのち、遠心により得た上清を「死細胞上清」、遠心により得た細胞ペレットを培地中で超音波破砕処理し液状にしたものを「死細胞ライセート」と呼ぶことにした。浸透圧計測を行ったところ、この方法によって得た死細胞上清では浸透圧は通常の培地とほぼ同様であったが、死細胞ライセートでは浸透圧は400~500mOsm/lに上昇していた。生細胞に死細胞ライセートを添加して培養した場合にはNFAT5タンパクの発現量の変化は少なかったが、死細胞上清を添加して培養した場合にはNFAT5タンパク量の増加が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト膠芽腫細胞株におけるストレス因子に対するNFAT発現の変化のタンパクレベルでのデータを得ることができた。また死細胞から放出される物質の生細胞に与える影響を調べるためのモデルの開発に着手できた。
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今後の研究の推進方策 |
高浸透圧およびその他のストレス因子に対し反応するNFAT分子の、腫瘍細胞における役割を細胞生物学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
NFAT分子の機能に関する解析への着手が次年度にずれこんだため。次年度に細胞生物学的機能解析を行う計画である。
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