研究課題
我々はヒト肺癌でmammalian Target of Rapamycin (mTOR)により発現抑制される新規分子としてmicroarrayからTrefoil factor-1 (TFF-1)を抽出した。研究期間中に、培養系でTFF1の機能を詳細に解析し、ヒト肺癌での関与、更に全ファミリーTFF1-3の肺癌のバイオマーカーとしての有用性を検討してきた。昨年度までに、i) TFF1の腺癌細胞特異的な発現、ii) TFF1過剰発現による細胞増殖抑制、細胞死の亢進、iii) 肺癌患者における血清TFFの高値、等を明らかにした。本年度はTFFの発現による遊走、浸潤の変化、ヒト肺癌での発現様式を総括し、血清中TFF1-3もassayした。[方法] 1. 1年目にTFF1の構成的過剰発現培養細胞株を樹立し、TFF1の細胞増殖への影響を血球計算版とCKK assayで解析した。遊走能の変化はscratch assayで、浸潤能はmatrigelでasssayした。2. flow cytometryと蛍光免疫染色によりTFF1発現細胞の増殖と細胞死の機序を解析した。3. 肺癌組織100例における免疫組織化学的発現を検索した。[結果]1.小細胞癌、扁平上皮癌でのTFF1発現株はどちらも遊走能、浸潤能は抑制され、特異的siRNAで回避された。2. flow cytometryではTFF1導入により細胞周期の回転は促進されるが、蛍光免疫染色によりアポト－シスの亢進も明らかとなり、結果的に増殖は抑制された。3.患者手術材料のTFF1-3に関する免疫染色ではTFF1-3は全組織型の肺癌組織で発現を認めた。4. 肺癌患者血清中TFF1-3の全てが正常コントロール群より高かった。[結論] TFF1は肺癌では増殖、浸潤能に抑制性に機能する。また、臨床面でも肺癌のバイオマーカーとなり得る。
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