研究課題/領域番号 |
17K08729
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 雄一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30178793)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非小細胞性肺癌 / 術後補助化学療法 / 治療効果予測マーカー / 予後予測マーカー |
研究実績の概要 |
UGDHに関しては当研究室で作製した単クローン性抗体であり、肺癌組織を用いた検討で従来の細胞質発現に加えて、核発現があること、核発現のある症例は様々な臨床病理学的因子と有意に正の相関性があり、予後不良であること、UGDHの核発現は多変量解析で独立した予後不良因子であることなどを初めて見出し報告した。また、患者血清中のUGDH量が健常人に比して有意に増加していることや、この分子の機能解析、シグナル伝達経路を明らかにした (Biomed Res 40: 17-27, 2019) 。現在、術後補助化学療法症例を用いた免疫組織化学的検討を行い、このタンパク質の核発現は患者の予後不良と相関することを見出し、報告すべく追加の実験を行っている。 IMMTに関しても当研究室で作製した抗体であるが、この発現は肺腺癌の様々な臨床病理学的因子と有意に正の相関性を示し、発現のある患者は有意に予後不良であること、多変量解析で独立した予後不良因子であることを見出し、siRNAを用いた解析で、IMMTは肺腺癌細胞の遊走能や浸潤網と関連していることを初めて見出した。この分子と腫瘍との関連性を詳細に検討した報告は一切なく、現在、投稿中である。この分子に関して、術後補助化学療法症例を用いた免疫組織化学的検討を現在行っている。 MYH9に関しては、術後補助化学療法症例での検討で、発現は扁平上皮癌に比して腺癌で有意に高く、無病生存率や全生存率と有意の相関性があること、単変量解析では無病生存率と有意の関連性が認められることが明らかとなった。細胞株を用いた検討で、元のシスプラチン感受性肺腺癌細胞株に比してシスプラチン耐性とした亜株ではMYH9の発現が有意に亢進していることも確認したので、機能解析を追加して論文としての報告を次年度に行う予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)昨年度、術後補助化学療法が施行され、その奏効率や無再発生存期間等の詳細が分かっているNSCLC患者で1年以内に再発した患者群と5年以上再発を認めない患者群の治療前血清を一次抗体として、自己抗体を利用した検討を行い、短期再発群で62個、長期被災初群で33個の抗原タンパク質を検出したが、その中から1年以内に再発した患者群で見出されたタンパク質としてTRAP1を抽出し、多数例の病理検体を用いた検討を行った。その結果、TRAP1の発現は腫瘍径やstage、リンパ節転移と有意の相関性があり、発現亢進群では有意に無病生存期間が短いことを見出した。現在、論文としてまとめるべく、この分子の機能解析を行っている。 様々な方法で見出した肺がんマーカーに関して、ショットガンプロテオミクス手法で見出したCD109とCD155分子に関しても肺腺癌組織における免疫組織化学的検討は終了しており、発現例はともに種々の臨床病理学的因子と有意に関連しており、予後も有意に不良。機能解析や患者血清中で有意に増加していることも確認したので、これも論文を発表予定。CD109に関しては術後補助化学療法症例による検討も行い、無病生存率や全生存率が有意に低いことも確認済みであり、次年度に機能解析を加えて報告予定である。 各種のプロテオーム手法で見出されたマーカー候補タンパク質について、まずは補助化学療法施行のない早期肺癌を含めた手術組織を用いた検討を行い、臨床病理学的因子や患者予後との関連性を検討し、一定の成果が出たものに関して、術後補助化学療法施行症例を用いた検討を行っており、今年度は、幾つかの重要な成果を英文論文として発表した。来年度は、補助化学療法症例における成果を発表する予定である。幾つかのマーカーについてはデータが揃い、論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度であることから、研究の足りない部分を補いながら、英文論文としてまとめていく予定である。 1.IMMT, TRAP-1, MYH9、CD109に関しては、免疫組織化学的データを中心にまとめ、その根拠となる肺癌細胞株を用いた機能解析を含めた検討を加えて、英文論文として報告する予定。 2.進行性NSCLC患者で奏効率がPDで効果がなかった患者の自己抗体で見出したgalectin-3の発現と患者の予後等を免疫組織化学的に検討している。これまで、発現のある患者は予後不良である傾向を見出しており、次年度はこの発現と患者の全生存率、無病生存期間、多変量解析等を行う予定。さらに細胞株を用いた機能解析も行う予定としている。 3.これまでの解析で見出した治療効果予測マーカー群の有用性を複数のマーカーを用いたアルゴリズムの確立、そして従来の術後補助化学療法の効果が期待できないII期-IIIA期NSCLCの特徴を明らかにすることを目的に実験を進めていく予定である。 次年度は、今年度と同様に表定期となるタンパク質に対する抗体類の購入や自動免疫装置を用いた免疫組織化学的検討を行うので、その装置に必要な試薬類の購入、細胞を用いた機能解析を行うので、細胞培養に必要な培地、機能解析に使用する試薬類の購入等、そのほとんどを消耗品として使用する。また、英文校正料金や英文論文投稿料は20万円計上する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は最終年度であり、今年度と同様に標的となるタンパク質に対する抗体類の購入や自動免疫装置を用いた免疫組織化学的検討を行うので、その装置に必要な試薬類の購入、細胞を用いた機能解析を行うので、細胞培養に必要な培地、機能解析に使用する試薬類の購入等、そのほとんどを消耗品として使用する。また、英文校正料金や英文論文投稿料は20万円計上する。
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