研究実績の概要 |
軟部肉腫において、Pazopanib著効例を経験し、網羅的遺伝子解析を行うことからチロシキナーゼ阻害剤(TKI)に対する反応性に関係する可能性のあるシグナルを推定している。現在それらに関連する遺伝子を肉腫細胞株に導入し、さらにTKIを作用させることで抗腫瘍効果の再現性を確認している。 また、小児発生の稀な融合遺伝子LMNA-NTRK3を有する軟部肉腫を経験したため、症例報告をした(Kohsaka S, Saito T et al. Human Pathology, 2017)。 さらに、胞巣型横紋筋肉腫の研究では、この腫瘍に特異的なPAX3-FKHR融合遺伝子産物がPPP2R1Aという脱リン酸化酵素をコードする遺伝子の発現を負に制御していることを見出し、これが様々なシグナルのリン酸化を亢進することから、腫瘍の悪性化に関わっている可能性を見出した。この酵素の活性を上げる薬剤を投与することで、抗腫瘍効果を認めた(Akaike K, Suehara Y, Saito T, et al. Oncotarget, 2018)。 胃消化管間質腫瘍(GIST)の研究においても、我々がこれまでGISTにおける予後推測マーカーであることを示していたpfetinというタンパク質とKITの発現がお互いに干渉しあっている可能性があることを見出した。これらの結果は、KIT変異を有するGISTでは、driver遺伝子であるKITの発現制御を行うことが新しい治療に繋がる可能性を示している(Suehara Y, Saito T, et al. Oncotarget, 2018)。
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