研究課題
軟部肉腫でpazopanibに奏功した症例を経験し、この症例を含む複数の肉腫臨床検体を用いて網羅的遺伝子発現解析などを行った結果、GLI1遺伝子増幅(+)があり、tyrosine kinaseの遺伝子増幅がないものが奏功を示す可能性があり、GLI1遺伝子増幅(+)があるものの、tyrosine kinaseの遺伝子増幅(+)の症例は短期間のみ治療効果があること、またGLI1遺伝子増幅がないものは、tyrosine kinaseの遺伝子増幅の有無に関わらず、治療効果が見込めないことを見出した(Suehara Y, Saito T, et al. Clinical Orthopaedics and Related Research, in press)。また、多数例の肉腫臨床検体を用いて、nanostringによるtyrosine kinaseをコードする遺伝子発現の不均衡(5'-側と3'-側の遺伝子発現量の違い)を調べたところ、1例にROS1の遺伝子発現不均衡を認め、さらにRNAシークエンスとRT-PCRによりMAN1A1-ROS1 融合遺伝子を同定した(Suehara Y, Saito T et al. in submission)。これらの結果から少数例ではあるが、骨軟部腫瘍においてもtyrosine kinase inhibitor(TKI)の投与により治療効果が期待できる症例が存在し、また一部にはtyrosine kinaseを含むような融合遺伝子が存在しなくても、その他の遺伝子異常の状態によっては、TKIによる治療効果が期待できるものがあることを示した。
2: おおむね順調に進展している
多数例の骨軟部肉腫臨床検体を用いた検証とin vitro実験を行う必要があるが、pazopanib等のtyrosine kinase阻害剤に対し奏功を示すような肉腫症例は非常に少ないこともあり、その中で治療効果に関わるような貴重なデータを得られたことは順調に進捗していると判断している。
解析結果により、tyrosine kinase阻害剤であるpazopanibに対し奏功性を示す可能性のある遺伝子異常(GLI1遺伝子増幅など)を見出しており、これらの遺伝子異常の有無を多数例の骨軟部肉腫臨床検体を用いて検証する。また、複数の肉腫細胞にその遺伝子異常を導入し、pazopanibを含むtyrosine kinase inhibitorに対する奏功性の変化を検討する予定である。また、GLI1遺伝子増幅によって肉腫細胞に起こるTKIへの反応性に関わる因子への変化を調べ、この現象の機序を探索する。
2019年度末に海外学会(アメリカカナダ病理学会)での発表をする予定であったが、コロナウィルス感染を危惧し、渡航を中止したため、海外学会参加費・渡航費として計上していた分が次年度使用へとなった。
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