研究実績の概要 |
骨肉腫におけるクリニカルシークエンスの結果から、新規治療標的となる相互排他的共起遺伝子増幅を約40%の骨肉腫患者に同定されている。それらは主に以下の3群:PDGFRA, KIT, KDR群、CCND3, VEGFA群、MDM2, CDK4群に分類される。これら治療指針の異なる群を層別化するには、クリニカルシークエンスを含めたNGSが有効だが高価であり、また現在のところ、その適応は標準的治療の終了した難治性の症例に限られる。また、遺伝子増幅を調べる方法としては、代表的なものはFISHがあげられるが、1回の検査では単一の遺伝子のみについての情報しか得られない点が問題であり、網羅的かつ簡易的な検査は現在のところ見当たらない。そこで我々は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)由来の腫瘍組織を用いて、これら治療指針の異なる骨肉腫を分類できるような簡易的な検査方法を樹立を試みた。Nanostringを用いて、標的遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブを作成し、腫瘍由来、並びに対応する正常組織由来のDNAを採取し、それらから得られる数値の比を取り、遺伝子増幅・欠失の検証をした。コントロールとしては、遺伝子増幅・欠失が既知である細胞株を複数用いた。また、凍結検体が利用可能なものに関しては同時に解析を行い、検体のホルマリン固定に伴う劣化の影響も調べた。結果としては、細胞株では公開されているデータベースに合致する遺伝子増幅・欠失が確認でき、また細胞株をフォルマリン固定した検体においても同様の結果が得られた。臨床検体ではその約30%に、前述の3群に相当する遺伝子増幅・欠失による分類ができた。また、凍結検体・FFPE検体の間でもほぼ同様の結果が得られ、固定に伴う影響はほとんどないことが示された。以上より、比較的古い検体も含めて、簡易的な検査による治療方針の策定に有用であることが示された。
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