研究課題
2020/2021インフルエンザシーズンは2019年中国武漢から発生したSARS-CoV-2感染症がパンデミックとなったが、国内でのインフルエンザ患者数は激減し、解析対象となる新規のインフルエンザ関連死亡例はなかった。昨年度に引き続き、これまでに集積したインフルエンザ関連死亡剖検肺組織を病理学的に解析した。鼻腔スワブ、気管、気管支、肺組織から型、亜型別にインフルエンザウイルスゲノムを検出し、肺病理像との関連を解析した。その結果、急性呼吸促迫症候群(ARDS)の病理像であるびまん性肺胞傷害像は、A型のH3N2亜型インフルエンザウイルスやB型インフルエンザウイルスとくらべ、A型のH1N1pdm 亜型インフルエンザウイルス感染肺組織に、有意に多くみられることがわかった。またH1N1pdm 亜型の場合は肺の末梢(肺胞領域)からもウイルスゲノムが検出されたが、H3N2亜型の場合は主に気管や肺の中枢側(太い気管支を含む領域)に多く検出され、肺胞領域からの検出は少なかった。インフルエンザウイルスはquasispeciesを形成して存在するが、H1N1pdmは肺胞上皮細胞に感染する変異体を含む場合があり、実際に重症インフルエンザ例では、気管吸引液からこれらの変異体が検出された。SARS-CoV-2がひきおこすCOVID-19は鳥インフルエンザのように肺胞上皮細胞に感染し、ウイルス性肺炎からARDSをおこし重症化する。びまん性肺胞傷害像を呈したCOVID-19剖検肺組織のサイトカイン・ケモカインの発現を調べたところ、ARDSを併発したインフルエンザ剖検肺組織と同様に肺局所で炎症性サイトカイン、ケモカインの発現量が増加し、IFNγとIP10は同一肺切片中のSARS-CoV-2量に相関していることがわかり、ウイルス肺炎に併発するARDSの病態に肺で増殖するウイルス量が関連することが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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