研究課題/領域番号 |
17K08736
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山川 光徳 山形大学, 医学部, 教授 (20183676)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | IgA腎症 / ER-α / 扁桃 / リンパ上皮共生域 / 濾胞樹状細胞 / TSLP |
研究実績の概要 |
IgA腎症の扁桃組織(リンパ濾胞胚中心とリンパ上皮共生域)にER-αが発現されることを初めて発見した。加えて、以下の成果を得ている。 1. これらのER-αの発現が、IgA腎症に特異的か否かについて、免疫染色とPCRで検討した。胚中心におけるER-αの発現にはIgA腎症と非IgA腎症の間に有意な差はなかったが、リンパ上皮共生域におけるER-αの発現はIgA腎症で有意に高頻度であった(p < 0.001)。 2. 免疫二重染色で、胚中心におけるER-α発現細胞は濾胞樹状細胞で、リンパ上皮共生域における発現細胞は扁平上皮であることを確認した。 3. ER-β1, 2, 3, 5とプロゲステロン・レセプターの発現をIgA腎症と非IgA腎症で比較したが、有意差はなかった。 4. 非IgA腎症の各種リンパ組織(虫垂、慢性胆嚢炎、脾臓など)の胚中心におけるER-αの発現を検討した結果、いずれでも胚中心にER-αが発現していた。しかし、同一組織に見られる上皮成分に発現はなかった。即ち、上皮成分でER-αの発現が見られるのはIgA腎症のリンパ上皮共生域の扁平上皮のみであった。 5. IgA腎症のリンパ上皮共生域におけるER-αとthymic stromal lymphopoietin (TSLP)の発現に相関性があった。 これらのデータは、IgA腎症のリンパ上皮共生域におけるER-αとTSLPの発現が、扁桃における異常IgA分子の産生に関わっている可能性が高いことを示唆していた。 今後、扁桃のリンパ上皮共生域におけるER-αの発現と胚中心でのIgA産生に関与する因子(activation-induced cytidine deaminase、Iα-Cμなど)の発現量との相関性について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、IgA腎症の扁桃内リンパ上皮共生域におけるER-αの発現が、IgA腎症の発症に深く関与しているとのデータを得ているが、残念ながら、splice variantを含むER-βの発現ではIgA腎症と非IgA腎症の間で有意差を認めていない。今後は、ER-αの発現とIgA産生に関与する因子(activation-induced cytidine deaminase、Iα-Cμ、transforming growth factorなど)との関連性を明らかにしていく予定である。また、 IgA腎症の扁桃組織(リンパ上皮共生域と胚中心)におけるER-αとTSLP/TSLP receptorの発現細胞の異同を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ上皮共生域におけるER-αの発現と胚中心におけるIgA産生に関与する因子(activation-induced cytidine deaminase、Iα-Cμ、transforming growth factorなど)との関連性を免疫染色、PCRなどで検討する予定である。可能であれば、in vitro系で、estrogenがIgA腎症の扁桃上皮細胞でのTSLP発現を亢進させるか否かについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定したいた研究成果がほぼ達成されたが、次年度使用額は次年度以降の研究経費(主に消耗品)に使用する予定である。
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