研究課題/領域番号 |
17K08739
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
矢崎 正英 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (70372513)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドミノ肝移植 / アミロイド伝播 / トランスサイレチン / レーザーマイクロダイセクション |
研究実績の概要 |
本研究では、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者の肝移植時に摘出された肝臓を移植する、いわゆるドミノ肝移植のレシピエントにおける、伝播性アミロイド(伝播性FAP)の(超)早期病変を病理学的・生化学的に解析し、伝播性アミロイドの伝播機構の解明を主な目的としている。現時点で、9名のドミノ移植レシピエントの、アミロイド沈着のモニタリングで施行された胃・十二指腸生検組織について、コンゴレッド染色を施行しアミロイド沈着を確認後、レーザーマイクロダイセクション(LMD)を用いて、アミロイド沈着部を切削・回収。検体をZwittergent溶液中で可溶化、トリプシンを用いて断片化した後、LC-MS/MSで、沈着アミロイドの生化学的組成を解析した(主にはトランスサイレチン(TTR)の野生型と変異型比率)。9名のレシピエントの内訳は、男性5名、女性4名で、移植時の平均年齢は約52.3歳であった。9名とも何らかの慢性肝疾患を有しており、6名が肝炎ウイルス関連の肝硬変や肝癌であり、ドナーのFAP患者のTTR遺伝子変異では、8名がVal30Met変異で、1名がVal30Leu変異であった。このうち3名が、肝移植後9-12年後に伝播性FAP発症している(末梢神経障害あるいは自律神経障害に起因する症状を発症)。解析結果であるが、病理学的検索では、8名でアミロイド沈着が同定されており、最短では移植後1年で、アミロイド沈着が陽性であった。生化学的検索は4名で施行しており、全例で、変異型TTR比率が70%以上と、野生型TTRに比べて、変異型TTR比率が優位に高い結果であり、今のところFAP患者における沈着アミロイド蛋白中の変異型TTR比率より、ドミノ移植関連FAP患者の変異型TTR比率の方が高い印象であり、早期病変は主に、変異型TTRがシードを形成することから始まっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析すべき検体は、ほぼ回収できており、現在、生化学的解析を継続して行っている。 すでに移植後10年以上経過した患者が複数おり、同一患者での、沈着アミロイドも病理学的変化やアミロイド蛋白の生化学的組成の経時的変化の検索にも着手している。
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今後の研究の推進方策 |
上術したように、解析すべき検体は、ほぼ回収できており、現在、生化学的解析を継続して行っている。また今後も、経過観察されている患者については継続して、アミロイド沈着のモニタリングがされているため、検体数を増やせる見込みがある。すでに移植後10年以上経過した患者が複数おり、今のところ5名については同一患者での、沈着アミロイドも病理学的変化やアミロイド蛋白の生化学的組成の経時的変化の検索を継続して施行する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、消耗品や試薬などが以前の研究費で購入したものの残りで賄えたものがあったこと、実験器具も老朽化してはいるが、初年度はなんとか使用できたため、予算全額を使用せず、翌年度に繰り越した。しかしながら、消耗品や試薬などは、すでに使い切っており、今後徐々に新たなものを購入する予定。また老朽化した実験器具も、今後徐々に新しくしていく予定であり、遠心機やPCR器なども今年度の予算とあわせて購入する予定。
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