研究課題/領域番号 |
17K08741
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
原 重雄 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10590648)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膜性腎症 / IgG / 特発性 / THSD7A |
研究実績の概要 |
4施設(神戸大学医学部附属病院、神戸市立医療センター中央市民病院、市立札幌病院、福岡大学)で診断された計443例の膜性腎症症例を対象にTHSD7A免疫染色を施行し、13例で陽性像を確認した(2.9%)。13例の臨床的背景は、平均年齢65歳(分布42~79歳)、男女比8:4(1例は不明)、平均血清Cr値は0.81mg/dl, 蛋白尿は7.10 g/gCrであった。2例で診断時に悪性腫瘍(前立腺癌、肺小細胞癌)の合併を認めた。4例ではアレルギー性疾患の合併がみられ、2例は木村病、好酸球性肺炎、2例は膜性腎症と診断される数年前に気管支喘息を発症していた。糸球体に沈着したIgGのサブクラスについて蛍光免疫染色で評価したところ、実施した12例中、11例はIgG4優位、癌を合併していた1例はIgG2, IgG3優位であった。PLA2R1染色は検討した11例中1例で陽性であった。悪性腫瘍を合併していた2例について、腫瘍組織でTHSD7A免疫染色を施行したが、陰性であった。 以上より、本邦のTHSD7A陽性膜性腎症の比率は約3%で、これは既報告とおおむね一致する数値である。多くは特発性膜性腎症の免疫学的形質であるIgG4優位の免疫複合体沈着パターンであったが、悪性腫瘍に加えてアレルギー性疾患などの合併が多いことが特徴であり、特にアレルギー性疾患合併については従来報告されていなかった点である。PLA2R1共陽性についても近年報告されており(Mod Pathol. 2016 Apr;29(4):421-6)、本検討でも背景病態を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
400例以上の膜性腎症症例を対象にTHSD7A染色を行い、陽性症例について臨床病理学的特徴を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
電顕所見も含めた病理組織学的検討を進めるとともに、補体活性化分子の関与について、蛍光免疫染色法による評価で検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、THSD7A陽性膜性腎症症例から遺伝子を抽出し、炎症性サイトカインのmRNA発現を検討する予定であったが、THSD7A陽性率が低いため他施設からの膜性腎症症例をできるだけ多く集める必要があり、症例の集積に時間がかかった。初年度で対象症例の臨床的背景の検討が終了し、次年度では主として免疫染色も含めた病理学的検討を行っていく予定である。
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