研究実績の概要 |
4施設(神戸市立医療センター中央市民病院、神戸大学、福岡大学、市立札幌病院)から得られた計469例の膜性腎症についてTHSD7A免疫染色を行った。14例のTHSD7A陽性症例が確認でき、臨床病理学的検討を行った。平均年齢は64.0歳、男女比9:5、平均Cr値0.84mg/dl、蛋白尿7.59g/gCrであった。陽性例の分布には地域差があり、福岡大は0%, 神戸大学は3.8%、神戸市立医療センター中央市民病院は5.0%、市立札幌病院は10.2%であった。4例にアレルギー性疾患の合併がみられた(木村病, n=1; 好酸球性肺炎, n=1;気管支喘息, n=2)。腎生検時の悪性腫瘍合併は2例にみられた(肺小細胞癌, n=1;前立腺癌, n=1)。光顕で糸球体基底膜にspikeが確認できたのは1例のみであり、他は全て微小変化であった。全例でIgG陽性、C3は1例を除き陽性であった。IgGサブクラス評価ができた13例中、12例はIgG4優位であり、前立腺癌を合併していた1例はIgG2優位であった。PLA2R1は1例で陽性であり、THSD7A-PLA2R共陽性例と判断された。Lectin経路活性化に関与する分子群について蛍光免疫染色で検討したところ、悪性腫瘍合併の2例と木村病合併の1例では微弱陽性~陰性、他症例は全例で強陽性であった。電顕評価が可能であった9例のうち、7例はstage I、2例はstage I-IIであった。生検後の治療経過を検討しえた8例のうち、前立腺癌合併の1例を除いて全例でステロイド単独、もしくはステロイドと降圧薬が投与された。このうち1例では約3年の経過後も依然として高度蛋白尿がみられたが、他症例では蛋白尿は消失ないしごく軽微な程度にまで改善した。
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