研究実績の概要 |
BCG failure症例の検討において重要になってくるのが、BCG膀注療法の作用機序である。癌細胞は細胞周期に異常をきたしたものが多いが、細胞増殖抑制にはp53とpRBという二大タンパクが関与している。そのうち膀胱癌はp53のmutationが多く見られる為、2018年度、我々は比較的異常が少ないpRBと他のタンパク(p21, p27)との関連性を培養細胞(T24, C33a)やsiRNAを用いて調べた。その結果、BCG膀注後 ①BCG曝露において,p21・p27の核内共発現が効果的細胞周期停止をもたらす、②p27または正常pRbの発現は,核内p21の発現には十分条件であるが,細胞質内p21の発現には必須である、③BCG曝露におけるpRb-T821リン酸化はp21・p27の核内共発現に比較し遅れる、④BCG 療法効果判定因子として,核面積の変化は使えないが,核クロマチン・核の縦横比は有効である、ことが分かった。 現在、非浸潤性膀胱癌のBCG膀注療法効果判定には、内視鏡や生検、自然尿細胞診がもちいられているが、自然尿細胞診にはBCG failure症例に対する判定基準は確立されていない。そこで、我々はBCG膀注療法を受けた15症例(再発群4例、非再発群11例)の自然尿細胞診を4つの時間軸(治療前、BCG膀注療法後、再発時、最新)で調べた。その結果、①再発症例では、治療前と再発時の細胞は形態的に近い、②BCG failure症例では、初診時自然尿細胞診に、核面積が小さく、核型不整が強く、核クロマチンが中心に濃染した細胞が出現している、可能性が示唆された。
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